李一族異能者の記
李氏様は酒を呷る。
「翠蘭は子ができない。でも私は異能。異能の血を引き継ぐ役目がある。翠蘭以外なんて考えらないのに」
トン!
大きな音を立て、盃を机に叩きつけるように置く。李氏様らしくない。
「今は翠蘭翠蘭言ってるけど、歳とって若い子に手ぇ出すとかアルアルです」
宥めるつもりで李氏様の盃に酒を注、、、ごうと思ったら、盃を引っ込められた。
「そんなことはせん」
「こら、香香。男の純情を踏み躙るな」
燈実様に怒られたし。
「はぁ。私の異能が何もせず子を作る能力だったらよかったのに」
「そんなハイパーな異能、今までにいたんですか?」
「さあ。知らん。記録の全ては読めん」
「記録があるんですね」
興味あるぅ。目をきらきらさせる私に、燈実様は肩をすくめて両掌を上に向けた。
「オレ、ぜんぜん読んでない。読む気無くすくらいの量だから。全部の異能の人が自分のことを書き残してくれちゃってるから、まー、見にくいわ読みにくいわ量はすごいわ。いついつに大地震が来るってのから、逃げた馬を呼び戻す話まで」
「それって、どこにあるんですか?」
「この屋敷の書庫に」
「読みたい!」
要望が通り、書庫に案内された。きんと冷えて埃臭い。整然とした書庫にごちゃごちゃとゴミが置かれているような一角がある。色褪せ、汚れた巻物、竹、綴じられた手記。それは宝の山。
李氏様と燈実様は私を書庫に残し、部屋に戻った。
まず、床に年代順に並べた。年号の順序が分からず、度々、火炕の上で寛ぐ李氏様と燈実様に聞きに行った。紙に年号とどんな能力かを書き、書物と一緒に置く。
あっという間に日が暮れた。
「おお、すごっ」
「香香、ここ、寒くね?」
床に広がる書物とメモを見て、李氏様と燈実様が驚く。
「あ、寒いの忘れてた」
そんな自分に呆れる。
「明日、燈実と私は李一族縁の寺へ行く。香香はここで好きなだけ過ごせばいい」
夕食を食べ、火炕の上に布団を並べた。
明かりを灯したままでいいと言われた。その下で古い異能の記録を読み耽った。
翌日は書物を棚に整理し、留守番をしながら読んだ。
予言は書き記した。そして、それが実現し終わっている場合は印をつけた。
夕方、李氏様と燈実様が帰宅。
「お帰りなさい。李氏様、導きありました。子供作らなくても大丈夫です」
顔を見た途端、伝えたくて暴走。李氏様の腕を掴んで訴える。
「香香、まず食事を。馬にも」
「オレら、帰ったばっか」
外套を脱ぎながら歩く李氏様にくっついて、私の口は止まらない。
「あったんですよ。ちゃんと予言が。玄孫に引き継がれるってのがあって、そしたら、李氏様、子供いなくてもOKじゃないですか」
「香香、落ち着け。玄孫は子の子の子の子。子を作らないと玄孫もできん」
「李氏様ってじーちゃんから引き継いだんっしょ? そのじーちゃんの玄孫です。それってきっと燈実様の子ですよ」
「先に厠に行かせてくれ!」
燈実様にまず夕食だと言われた。
米を炊いて、お土産の羊の肉を焼いた。そして、漬物、昨日からある野菜スープ。
食事の準備が整い、やっとゆっくり話ができる。
「予言見つけました。『玄孫に異能が誕生する。異能が途絶えることはない』」
手記を開いて見せ、ドヤ顔で報告。
「あ、そっか。だからオレがサポートに選ばれたのか。曽祖父から見たら、オレの子供は玄孫に当たる。李氏様の次はオレの子供ってのがあり得るのか」
燈実様が李氏様に説明した。
「なるほど」
「そーなんです。だから李氏様は、翠蘭だけでいーんです」
李氏様も理解してくれた。
「導きか。この予言も、香香が見つけたのも、燈実が選ばれたのも」




