無知なガキは戦へ
「教育部門?」
民衆も政治に参加したい。国の経営を理解したい。それには読み書きが必要。という流れだそうな。
希望すれば誰でも学校で学べるようにしてほしいというのが、民衆からの要望。
「他にも、貴族も税を払うとか、要望書にあったそうだ」
「貴族って、税がなかったのですか?」
「税よりも負担してたよ。皇帝が寺を建てると決めれば、貴族が経費を負担した。皇女が嫁ぐとなれば、婚礼に必要な物を寄進し、東の国からの客人をもてなせと言われれば、何十人も何ヶ月もの宿泊費、豪遊費、その他諸々を世話する」
「そんな」
「そーやって、有力な貴族の力を削ぐんだよ。だから、貴族は賄賂で小金を貯める」
「事情があったのですね。これからは、税を払うだけで済みますね」
「その負担率についても、民衆が納得するものにしないと。今のところ、身分制度を無くすという要望はあるものの、屋敷や財産を取られることはなさそうなんだ」
「それをしたら、貴族の屋敷に仕えている者や、貴族が運営している場所で働いてる人が困りますものね」
例えば李一族なら、銅山で働いてる人、鋳物を造ってる人、運んでる人、他にもいろんな人が仕事を失う。貴族は、皇帝の無茶振りが無くなって税を納めるだけ。今までより負担減でラッキーだったりして。
仕事の後は、ちょっと雲嵐♪
雲嵐は、教育部門ができることを知っていた。
「兄貴が言ってた。要望書を出したって」
「誰が書いたの?」
貴族以外のほとんどの人は読み書きができないはず。
「商いやってる人。その人ら、政府の徴税部門で、いろんなこと聞いてるらしい。仕事を引き継ぎたいって」
商人は帳簿をつけるから読み書き計算ができる。
「官僚の?」
「うん」
うっわー。それは官僚側としては穏やかじゃないよね。だってさ、すっごい勉強して、科挙に合格した人しか官僚になれないんだもん。
「いろいろ進んでるんだね」
「オレ、戦、行く」
「え?」
突然すぎ。
「志願した。場所がさ、街道のでっかい街の北にある分岐点。そっから北へ行くと北部で、西は国境の向こうまで繋がってる」
「どーして志願なんて……。寺の近く?」
「うん。あの街に攻められないようにするって聞いた。オレらが新しく住む予定んとこ、守りたくて」
「今まで無事だったからって、今度も無事って限んないのに」
「誰かが行かなきゃ。報酬だって貰える」
「前の戦の分、貰ったでしょ? それに、馬牧場の資金だったら私だって出すよ。一緒に暮らすんだもん」
「報酬はオマケ。寺を戦場にしないって約束したし。食い止めたいんだ、北部軍と北西部軍。そんな顔するなって」
「だって」
「顔、くしゃくしゃのままんなっちゃうよ」
バカ。雲嵐のバカ。せっかく帰って来たのに。
ボカッと雲嵐の胸をグーで叩く。バカタレ雲嵐。続けてもう一方のグーで雲嵐の胸を叩く。ボカッボカッボカッボカッ。
「戦なんて行っちゃダメ。家の仕事だってあるでしょ?」
「家はいっぱい家族がいるから。オレいなくても回ってたし」
「だったら、ほら、新しい世を作るためにいろいろ考えたり」
「それは兄貴がやってる。オレはまだガキで、世の中のこと、偉い人らと喋れるほど知らねーもん」
「ガキだったら戦に行くなっ」
「絶対帰ってくるから」
「……」
「オレだって、役に立ちたいし。オレにできることは、戦に行くこと」
「他のことだってできるよ」
「意見を言えるほど世の中知らねーし、字ぃ書けないし読めない。馬を扱うのは得意。銃も。体力はある。戦にぴったりじゃん」
そんな風に言わないでよ。消去法で自分のすること決めないでよ。
「帰ってきてね」
「当たり前。次の戦では、10人を率いるんだ」
「おめでとう、昇級だね。10人の命も守らなきゃね」
雲嵐、戦で偉くなっても、ぜんぜん嬉しくないよ。死に近づくだけ。




