従来官僚事情様々
官庁で手伝いをしていると、李氏様の下で働いている王さんがしょんぼりと肩を落としていた。
「どうかなさったのですか?」
「『くだらない』って言われちゃったよ」
「それは元気をなくしますね。お茶を淹れます。休憩しませんか?」
書類が多いので、机でお茶を飲むことは禁じられている。2人で休憩室へ行った。
王さんは休憩室で7枚の紙を広げて溜め息を吐く。
「僕は、役に立つと思ったのに」
「それは何ですか? 人の名前が書いてありますね」
「今、役所に来ている官僚と、来ていない官僚が書いてあるんだ。全員じゃない。主要な人だけ。ほら、来てる人は民主制に賛成、来ていない人は皇帝の一族派か様子見ってことだから。まあ、トップはどっち派も来ているんだけれど」
紙は部門ごと。右上に経済、農、軍事、土木、外交、法と書かれている。
「内閣府は全員、民主制に賛成なのですか?」
「いや、内閣府は宮廷の中にあるから、ちょっと行きにくくて調べてないんだ。法の大臣に見つかったら、仕事サボってるのバレるし」
「見たいです」
「ホント? 1人でも見てくれたら、調べた甲斐があるよ」
官僚の名前なんて知らない。だから今も仕事に来ている人の割合を見ていく。
「経済の部門は2枚あるのですね」
「経済部門は中で2つに分かれてるんだよ。税を取り立てる徴税部と使い道を分ける主税部に。徴税部の農業の部分は、農部門にすればいいのにって思うけど、口には出せないな」
王さんは舌を出しながら手を首の前で水平にした。
「いろいろあるのですね」
「経済部門の主税部は、官僚の中でもエリートなんだ」
「官僚の中にも上下があるのですか?」
「まあ、ね。経済、内閣、法、外交、軍事、土木、農の順かな」
「内閣が1番上だと思っていました」
「組織的にはそう。でも実際は内閣府長が1番上、次に内閣府人事部長、次は経済主税部、で、内閣、法、外交、軍事、経済部門の徴税部、土木、農って感じ」
「複雑ですね」
知っている名前は法部門の来ている人。他は……あった。外交部門の主要人物として、陳という名字が書かれている。×印。この人、いたんだよ。今、金満寺に連れてかれちゃってるけど。ホントは民主制に賛成派?
実は、あの髭の薄い陳氏の書類スペースで見つけた「河港使用許可証」の番号「一八」と竹筒の中身について、李氏様に伝えてないんだよね。
いろいろありすぎたってのは言い訳で、なぜそんな場所へ行ったのか説明できないから。
竹筒の中身については言うべきだって分かってる。西の国の皇帝から央の国の皇帝への文。なぜ、一介の官僚がそんな物を持っていたのか。今それは、李氏様の屋敷の私の部屋にある。
「これ、貴重な情報だと思います。誰ですか『くだらない』なんて言ったの」
「李氏様」
あらま。
「きっと、忙しすぎて気が立っていたのですよ」
「『くだらないことしていないで、仕事をしなさい』だってさ」
この手の足りなさじゃ、言いたくもなるかも。
王さんの調べによれば、経済6割、農1割、軍事9割、土木2割、外交1割、法5割しか人は仕事に来ていない。
「農、土木、外交部門が少ないですね」
「それは仕方ないんだ。自分達のことは自分達で決めるって農民が言ってるから。土木は国が決めた大きな工事をするのに、今、国がよく分かんなくなってるしね。外交も国があってのもの。土木で来てるのは、外国船との戦いで荒れた、港周辺の整備関係の人達くらい」
「そうなのですね」
「なんかさ、民衆の代表が話し合いに来てて、新しく、教育部門ができるって」
いろいろと進んでいる模様。




