誰かの周りで人が
「最近はありがたいことに、銅銭の需要が高くなっていますよね」
燈実弟は10歳くらいなのに既に李家の商いに関心あり。
「なぜ、需要が高くなったのかしら」
燈実妹がなぜなーぜ。
「みんな物々交換をやめて、銅銭遣うよーになったんだよー」
「あら燈実、それはもうとっくの昔からよ」
「経済が拡大しているのですよ」
1番賢そうな李氏様の言葉にみんなで納得。大量の銅銭が東の国に流れて、その足りなくなった分を欲しがってるってのもあるのかな?
「李家は、銅銭以外にも商いをなさっているのですか?」
訊いてみた。
「いや特には。まあ、銅関連には若干関わっているが。銅銭造りよりも儲かるものもあるのでな」
銅の産出、鋳造、運搬、どれもお金がかかりそう。銅銭造りの利益率はそれほど高くないのかも。
「以前、貿易が制限されていることで、李家が利を得ているとおっしゃっていたので、他の商いもなさっているのかと思いました」
「多くの銅山を持っていて、銅の価格と流通は李家が決めている。そういった点では、他の商いと言えるのかな。海外、特に東の国から銅が安く入って来たら、政府の承認なしの銅銭が今より出回ることになって、李家の利益が減る。”貿易が制限されていることで、李家が利を得ている”というのは、そこのとを言ったのだ」
政府の承認がなくても、私鋳銭は本物として流通するし、鋳造は罪にならない。
それにしても東の国ってどーなってんの? 金銀ざくざく、銅まで採れる。北の国が強くてチートって言われてるけどさ、東の国こそチートだと思う。もともと持ってんだもん。
「今だって、質の悪い私鋳銭も流通してますもんね。銅でできたものを溶かして鉄を混ぜて造っているそうですね」
燈実弟って物知り。
「李氏様、民主制になったら、大変になりますね。頑張ってください」
エールを送っておいた。
「だから麗、銅銭造りの既得権益については口外するな」
「分かりました」
「みんなもよ」
「「「はい。お母様」」」
さっきの話からすると、銅銭造りよりも気にしなきゃいけないことがある。
「1番目立つ既得権益は貿易です。密輸が横行してるのは、皆が貿易の自由化を望んでいるからです。自由貿易を始める前に関税を決めないと」
「ん? 麗、今、なんと言った」
李氏様のリクエストに答えてリピート。
「関税を決、、「関税! そうだ。関税だな。分かった」
やり取りを聞いていた燈実様が天井を向いて考える。
「うーん。華港の利権は経済部門と外交部門が複雑に絡み合ってるからなー。李家は法部門と軍事部門には力があるけど。あと土木部門?」
「お兄様、なぜ土木部門に?」
燈実妹が小首を傾げる。かわよ。
「地方の農村から兵役で来る人達は、兵士のときは戦や警備が仕事だけどさ。悪い人捕まえたりとかも。ずーっと戦があるわけじゃないから、土木作業もするんだよ。だから軍事部門と土木部門は繋がってんの」
へー。知らんかった。
「叔父様。新しい政治のシステムになるってことは、今までの外交部門と経済部門の砦を崩すチャンスってことです。李家にも可能性があります。昔、法部門の李家は孤立していたけれど、父の存在で軍事部門にも力が及ぶようになりました。何が起こるかは分かりません」
燈実弟、本当に10歳くらいなんだろーか。
「ふふふ。そーね。あの人は科挙はダメだったけれど、素敵でしょ?」
「お母様、僕がしているのは、お父様のことではなく、李家の既得権益の話です」
このガキんちょ、中身に人生一周した人入ってね?
「……。そうだな。外交の大臣の秘書の自殺と外交の元副大臣の罷免で、外交部門は力が弱まっている。切り込む隙はあるだろうな。それにしても、経済部門は力がありすぎる」
「金満寺の住職は、元、経済の副大臣でしたよね?」
その言葉に、燈実ママの顔から笑みが消えた。
「金満寺の住職? 燈実、あの方は、今もお元気なのかしら。それから、今でもあの方の周りで人は亡くなってるのかしら?」
いきなりぶっ込んできた。
「お母様。子供の前でそんな話」
燈実様が弟妹を気にする。
「僕は平気です」
「私も。そんなこと今更」




