李一族の既得権益
李本家で食事をいただくことになってしまった。こんなとき、白玉団子の湯圓ババア、じゃなくて湯圓佳様に行儀作法を習ってよかったって思う。
食事には燈実弟と燈実妹も参加。美形一族。
あのちんまりした異能ジジの遺伝子どこ行った?
「あと、嫁いだ姉が1人と、学校へ行っている弟が1人」
その2人も美形なんだろーなー。
食卓には華やかな料理が並び、大人には酒が振る舞われた。もちろん私は大人枠。ラッキー。
思うんだけどさ、女って男よりも、綺麗な女の人の前の方が緊張するよね。燈実ママ、燈実妹に緊張しまくり。お肌綺麗だよなとか、李家の長男に嫁ぐなんてバリお嬢様なんだろーなとか、この家は陽キャの英才教育の場だなとか。もう皆さん、いるだけで華やか。
外見がスーパーな女性は中身もスーパー。燈実ママは、隣にいる私が居心地いいように話しかけてくれる。
「旅の話を聞きたいわ。船で大河を下ったのでしょう?」
燈実ママは目をきらきら輝かせる。これ、豪華クルージング的なの期待してる。ぜんっぜん違うから。足に錘つけられて、強面のおっさんに囲まれてたから。
「はい。大きな船でした」
「まあ。ロープで他の船に飛び移って戦ったり、他の船に大砲を撃ち込んだりしたのかしら?」
違う期待してた。マダムは冒険活劇がお好き?
「いえ、、、。海賊とは違います。普通に商品を運んでいました」
「人に言えないような物なの? ね、ね、ほらほらほら、闇でしか流通させられないお宝とか、アヘンとか」
闇で流通してるお宝って……盗品扱ってたよね……黙っとこ。
「私が見た商品は、陶磁器や置物や絵でした」
「意外と地味ね。ふふふ」
そんな話をしながらの食事会は楽しい。燈実パパは不在。軍部に詰めているそうな。法部門の大臣である李氏様の父親は、最近、帰らないとのこと。
「お義母様が内閣府にいる皆さんへの差し入れに行かれました。着替えも持って」
燈実ママが義両親の所在を伝える。内閣府は宮廷の敷地内にある政治の中枢ーーーだった場所。
「んー。上司が仕事してるのに、私がここにいていいんだろうか。兄も軍部にいるというのに」
李氏様がそわそわすると、
「下々の者には分からない話し合いでしょうから。大丈夫ですよ」
燈実ママがバッサリ。あらら。中間管理職っぽい李氏様であっても、大臣から見ればペーペー。
「そうですね。央の国のこれからを話し合っているのでしょう」
「内閣府長と6人の大臣でやってんだろーな」
6人の大臣は、経済、農、軍事、土木、外交、法の6つの部門のトップ。
しつもーん。
「どの方も貴族ですね。民主制に反対してる人はいらっしゃるんですか?」
「軍事の大臣は民主制の賛成派よ。夫曰く、政治のシステムが変わっても食いっぱぐれないように頑張ってるそうよ。機密事項が多いし、簡単には変えられないって踏んでるみたい」
燈実ママは赤裸々に語る。
「法部門の大臣、父は民主制に賛成している。李家は身分制度が廃止されたとしても、公認の銅銭製造の仕事がある。財を失うことはないから、立場を気にせず、自身の考えを貫ける」
李氏様は余裕。
「それって、既得権益ではないでしょうか?」
私の何気ない一言で場が静まり返った。
え?
李家の皆さんがお互いに顔を見合わせる。
「まあ大変」「ヤバッ」「気づかんかった」「「……」」
5人が私に詰め寄ってきた。近い近い近い。
「他の人に気づかせちゃダメよ」「人にゆーな」「全力で権利を守ろう」「「お願いしますっ」」
李家の皆さんは、政府公認の銅銭鋳造権は必要らしい。当然と言えば当然。この豊かな生活も李家の威光も、銅銭造りの上に成り立ってる。
「銅の産出が限られているから、市場にある銅銭の7割は李家が造ったものだ」
ゴリゴリの既得権益やないかーい。




