人選されたのかも
「実は、お祖父様にお願いがあります」
李氏様が切り出した。
「珍しいな。なんだ?」
「世は乱れ、政治をする者が不在のまま。都は皇帝側にいつ攻められてもおかしくない状態です。先の外国船との戦で戦費を遣い、次の戦はなんとかなったとしても、この先、まだまだ金が要ります。あるところにはあるのです。そこで、お祖父様から内閣府長に、戦費を寄付するよう言っていただけないでしょうか」
「嫌だ」
バッサリ。内閣府長って、異能ジジも意見できない存在なのかな。異能ジジがどれくらい凄い人か知らんけど。
「おお祖父様、あの陳氏様を選んだのはおお祖父様だと聞いています。それでも言えないのですか?」
異能ジジは眉毛に隠れそうな目で2人を見た。
「世が乱れているからと、どさくさに紛れて。自分達がどんなに傲慢なことを言っているか分かっているのか? 私財と国庫金は別物だ。もしも貴族だからという理由でそれを促したいのなら、まず、この李家の全ての財産を擲ってからだ」
「李家と陳家では持っている量が違います。あっちは皇帝よりも多くの財を持っているという噂ではありませんか」
燈実様が訴える。
「量の問題ではなく、物事の道理の問題だ。それにな、戦費というからには、兵糧のことを言っておるのだろう」
「「はい」」
「私は陳氏を選んだ。穀物量の把握と価格と流通、それは国の安定に繋がる。それだけは陳家の商売から切り離し、兄に任せるなと言った。他の者にはできん。兵糧が欲しいのなら、正規のルートで入手しなさい。李家の私財を遣うのなら、止めん」
撃沈。
「そんな」と言う燈実様の隣で、李氏様は素直に納得していた。
「冷静さを失っておりました。お祖父様のおっしゃる通りです。今、仮に内閣府長が私財を投じたら、貴族は自分達も寄付を考えなくてはならなくなる。ますます我々から貴族が離れるでしょう」
「ますますとは。すでに離れている貴族がいるのだな」
「はい。多くの官僚が仕事に来ていません。民衆は政治の民主化と共に、既得権益を壊し、身分制度を撤廃することを訴えています。貴族は身分と共に収入源の多くを失う。離れるのは当たり前です」
もし民衆が政治を行うようになったら、貴族は身分と収入、特権、貴族だからこそ得ていた職を無くす。例えば官僚のような。
「燈実、軍部もか?」
「戦中ですので、軍部は比較的来ているのですが、何人かは、皇帝の弟に味方した方がいいのではないかと、身の振り方を考えているようです」
「陳氏はどうしている。陳氏が皇帝の座に着くという道もあれば、皇帝の一族を迎えるという道もある」
「陳氏様は『民こそ財産』とおっしゃって、民主制を受け入れる方向で動いていらっしゃいます」
「かっこいいなぁ、アイツは」
異能ジジは感嘆。
陳氏は異能ジジよりかなり年下。昔からいるだけでそこが光り輝いていたと言う。今でも美老人。若いころは相当だったと思う。
文武に優れ、2つ年下の皇帝は、誰の目から見ても明らかに陳氏に憧れていた。
「まあ、男も女も老いも若きも皆、アイツには憧れた」
なんか分かる。人たらしだよね。計算な気もするけど。
「戦場で活躍し、政でも手腕を発揮する。見事な両刀。なかなかいない」
雲嵐はどっちだろ。戦の方のタイプかも。銃特化型。
いつどんなときも雲嵐のこと、考えちゃう。なんか自分が変。しょーがないよね。素敵すぎるもん。僧を助けたり、友達に私のこと堂々と紹介してくれたりして。うふっ。妻だって。
深刻な話なのに頭の中が雲嵐にトリップ。にやけてたんだと思う。視線を感じた。じーっと異能ジジが私を見てる。急いで眉間に皺を作り、深刻な顔をしてみた。
「この娘の後ろに大きな力がある。香香を握っておけ。そうすれば李家は安泰だ」
根拠のない発言をして、異能ジジは、、、
「ひっ。死んだ!?」
「ちげーし」「眠られたのだ」
こてっと床に転がった。




