密貿易>賠償金?
「金満寺から、たっくさん金銀、押収したんですか?」
「いや」
「なんで!? ……デスか」
うっかり敬語忘れちゃったよ。
「疑わしい芸術品はチェックした。それ以上は法的にできない」
「牢に金満寺の住職、いませんでした。まさか、捕まえてもいないのですか?」
「事件はあの屋敷で起きた殺人、及び死体遺棄。芸術品に関してはこちらが極秘で勝手に調べていること。それも皇帝亡き今、何の為に暴く必要があるのか」
「誰が治める世であろうと、横領はダメなことです」
「戦の最中、個人がこっそり小金儲けてるなんて、どーでもよくね?」
徹夜のせいか、李氏様が壊れて言葉が……。
「小金じゃないですよ」
金銀の箱、めっちゃあった。
「大金であろーと、社会が新しいシステムになるってときに、こんなことやってる場合じゃなくね?」
法を司る人がこの調子。私としては、雲嵐との新生活に関係ないからいーんだけど。好奇心はあるかな。それに。
「意味はあります。もしも戦が長引いたら、戦費がかかります。新しい世ができるなら、そのために資金が要ります。今、法の目がなかったら、どさくさに紛れて悪いことし放題。現役人は着服し放題ですよ」
「罪人が牢から逃げ出したり、な」
「さーせん」
殺人の容疑者逃したこと、絶対に黙ってよ。
「しっかし。地味な仕事だな」
平和な世では文官が、乱れた世では武官が注目されるもの。
「住職の妾んとこは、今、空き家ですか?」
だったら泥棒が入りそうで、金銀が心配。
「いや。調べに行ったとき、別の若い僧が3人いた。住職の趣味は細マッチョなんだな」
細マッチョの下半身に数字が見えたって?
ど下ネタをスルーして、机の上に視線を落とす。
住職の帳簿には、日付、人の名前、入出金が並ぶ。用途が書いてないんだよねー。ブラック過ぎて書けないのかな。殺し屋を寺所有の屋敷に住まわせてたくらいだから。
あれ? 最後が支払いの記録で終わってる。あの、小船が重さでちょい沈む量の銀の箱については、まだ記載してなかったのかな。
ペラペラと記録を探す。ない。ないないない。箱にきっちり並んだ草鞋の形の金について。
しつこく4回見たけどなかった。つまり、あれが東の国から運ばれた物。運ばれたばかりで記入前だったと思われる。
妾の屋敷への小船は3艘だった。
MAXで1艘に30箱が積めるって推測したんだっけ。それが3艘。
30×3=90箱。
銀じゃなく金。
金の重さは銀の2倍。1艘に銀だったら30箱積めても、金は重いから15箱しか積めないと考える。
央の国では、金の価値は銀の8倍。基準は重さ。
銀換算で、1銀×8×15箱×3艘=360箱分。
すげー。
銀だったら360箱分かぁ。北の国に毎年払う賠償金が銀240箱。それよりいっぱい。$_$
プラス、東の国から、央の国で売る物仕入れてるんだもんねー。爆益。
おっといけない。仕事仕事。
就業時間が始まっても、広い部屋に2人しか来なかった。
李氏様は昼まで仕事をして馬車で帰宅。
私は、軍の官庁にいる雲嵐の所へ寄った。女の子がいたら追い払わなきゃ。って思ったら、猛禽類女子はいなかった。
男の人達、戦行っちゃったもんね。帰って来たところを狙うんだね。
風通しのいい場所で、雲嵐はすやすやと眠っていた。
もう、どこにも行かないで。




