共鳴
雲嵐が本堂を出ると、境内は人だらけ。男達が米を炊き、キジやウサギを焼いていた。食べ物を振る舞われ、質問タイムが始まった。
『兄ちゃんはどこの者や?』
都の南、大河沿いの山に住んでいると答えると、更に『都では民衆が政治をするのか』などと訊かれた。
ちょっと雲嵐、その前に相手にも質問しよーよ。一方的に情報取られてるじゃん。
宮廷が燃え、皇帝がいなくなったけれど、この先どうなるかは分からないと、雲嵐は正直に答えた。
それを聞いた男達は、自分達の隣の高原地域では、統治者を捕らえて民衆が地域を治めていると盛り上がった。自分達は税に苦しむだけの日々に嫌気が差していると語る。
「そんとき、北西部の人らなんだって分かった」
目的も聞こーよー。
『すげっ。宮廷が火事』
『身の丈6尺の香香が、口から火を噴いて燃やしたんか?』
『あれ? 香香は捕まったって聞いたけど』
『だからムカついて、宮廷に火ぃ噴いたんやろ』
『外国に攻められたって話はどーなった?』
『それも香香が鼻息で吹き飛ばしたんじゃね?』
何それ。
『あれは語り部が広めた作り話で、香香は普通の女の子です。誰もが力を貸してあげたくなるような』
雲嵐♡
『『『『まっさかー(笑)』』』』
『いろんなことが重なったんです。外国からも攻められた。そっちに兵が行って、宮廷や牢の警備が手薄になってたから、香香を解放しろって運動が野放しになって。それに、ちょっと前からみんながいろんなとこに集まって、どーゆー国にしたいか話し合ってたんです』
初耳。下の下の下の檻の広場で演説してたことしか知らない。
『兄ちゃんもか?』
『オレの兄貴が行ってました。民主制っつーらしいです』
その話に、ぱっとキラが浮かんだ。そんな言葉知ってる人、キラと兄しか思い当たらない。
『なんやそれ』
『自分らの国は自分らで治めるって』
『オレ、それ聞いたことある』
『オレも』
『税も自分らで決めるってな』
『いーなーそれ』
『貴族も税を納めるってな』
『今まで納めてなかったのかよ』
『ずりぃ』
そんな話をしていると、本堂から軍の偉い人が出てきて激を飛ばした。
『日の出前に出発する。早く寝ろ。今日みたいにちんたらちんたら歩いてんじゃないぞ!』
偉い人が姿を消すと、みんなの不満が爆発。
『なんだあれは』
『重い鎧や盾、オレらに持たせてよ』
『自分らは馬』
『休憩も碌にしねーで。こっちの身になれや』
『あいつら白米食ってたし。オレら玄米なのに』
そして、話題は普段口を閉ざしていたことにまで及んだ。
『高原地域、いーなー。オレらも自治ってーのやったら、こんなことしなくても済む』
『都もいーなー。民衆が皇帝倒すなんて、かっけー』
『バカ、それをオレらが成敗しに行くんやろ』
『なんで? なんでなんで?』
『オレらも民衆なのに、仲間、殺すんか?』
『オレは嫌や。そんなんしたくない』
『オレも』
『ワシも』
『あいつらが、オレらの敵なんと違うか?』
みんなは本堂の方を見た。
「そこで襲いに行くのかと思った」
「行かなかったの?」
「武将ら、鬼強いって。自分らなんて秒殺って」
「そっか」
北西部には北の国境がある。北の国境はチート北の国との小競り合いがときどきあるから、強強軍団が配備されてる。高原地域が自治状態になっても隣の北西部がそうならなかったのは、強強軍団が睨みを利かせてるからだと思う。
「みんな、民衆同士で戦うの嫌だからって、帰った」
「帰った!?」
「ちゃっかり兵糧持って。オレのこと全く忘れて」
雲嵐は、歩兵達が寺を出て、ある程度時間が経ってから、そっと、自分の馬を連れて都を目指した。
「みんなが逃げるの待ってたんだね」
どさくさに紛れて逃げればよかったのに。
「馬が騒いだり、足音だったりで気づかれたら、誰か殺されるじゃん」




