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天命のクロスロード


「今日さ、これから、牧場にしたいとこ見に行って来る」


「私も行きたい! あ」


「ん?」


「馬、返さなきゃ。行くのに1日だったら泊まりだよね?」


「はは。オレだけで行くつもりだったし。女の子が1日馬ってキツいって。ガオも連れて来なかった」


「ガオ、拗ねてない?」


「ちょっとは大人んなったみたい。前は戦の召集にまで勝手について来る甘えん坊で困ってたけど」



「灰色狼を連れた」って李氏様まで知ってたもんね。



「ガオかわいー」


「今は暑いし、ゴロゴロしてる」



 だね。わんこ系は暑いとき日陰で寝てばっか。



「じゃ、帰ったらいろいろ聞かせてね」



 眩しいほどの笑顔で雲嵐(うんらん)は出かけた。希望と夢でいっぱい。


 雲嵐って、意外と行動力あるかも。西の国の断崖絶壁の上まで来たときは、ホントにびっくりした。ガオに「こっち」って言われただけで、何ヶ月もの旅に出ちゃったり。私を牢から出すために戦で頑張ったり。馬牧場のために1人で出かけちゃったり。


 ますます好き♡







李氏(りし)様、李氏様」



 夜更け、屋敷の門扉を叩きながら叫ぶ、兄の声で目覚めた。



「お兄ちゃん?」



 何事?


 眠い目を擦りながら部屋を出ると、翠蘭の部屋から李氏様が出てきた。気まず。李氏様にとっては当然のことらしく、普通に「俊熙(ジュンシー)の声だな」なんて。


 使用人が取り次ぎ、部屋へ案内しようとする。キラと兄は玄関で立ったまま。



「すぐに帰ります。北西の地域を統治していた皇帝の弟が、軍で攻めてきます。数400〜500」



 皇帝の弟は何人もいる。後宮システムで生まれ放題。闇深くて育ちにくいらしーけど。


 李氏様は険しい顔になった。



「こちらに着くのはいつごろですか?」


「分かりません。すでに出発したとのことです。最初の軍勢は小さいと聞きました。こちらが外国船との戦や混乱から体制を立て直す前を狙うために急いだようです。後発隊もあると考えられます」


「弔い合戦か。キラ様、俊熙様、ありがとうございます。私はすぐ、軍に知らせに行きます。お茶ぐらい飲んで行ってください」



 李氏様からの言葉を遮り、キラと兄は門を出た。



「いえ、私達はこれから、みんなのところに戻ります。失礼します」


「シツレイします」



 即、李氏様は馬で出かけた。


「みんな」? お兄ちゃんって、こっちに知り合いできたのかな。雲嵐とのこと、報告したかったのに。



 なんか、目ぇ覚めた。

 書庫へ地図を見に行った。


 雲嵐が馬牧場を考えてるとこってどこだろ。馬で1日くらいだから、きっと、この大きな街の辺り。どの山っかなー♪


 ついでに兄が知らせてくれた北西部を見た。

 へー。北西部って高原地域の手前なんだ。ここって、西の国境へ行くとき、監獄に立ち寄ったとこら辺じゃん。語り部の彩雅がいた。

 西の国境への街道は、都から少し北北西に行ってからひたすら西へ向かう。


 今、(おう)の国乗っ取るチャンスだもんね。


 李氏様もキラも兄も央の国の一大事に血相を変えていた。でもぉ、私は危機感(ゼロ)。すまん。上のなんかが変わったって、自分はあんま、かんけーないから。

 私にとって大事なのは、雲嵐との新しい生活♡♡


 地図の北西部から都への道を指で辿ってみた。



 トントントントン



 十字路を何度も。指で叩く。

 そこは、雲嵐と私が新居を近くに構えたいって思ってた、大きな街のすぐ北。南へ行くと都。西へは国境を越えてどこまでも繋がるキャラバンの道、北へ行くと北部、東は細いジモティの道。


 ここで北部の軍が合流して、大軍になる可能性がある。

 北部は軍を出すほどの力はないと思ってた。でもさ、加勢ならできる。


 味方同士とは限んない。北西部、北部が各々挙兵していたら、ここで衝突する。


 雲嵐、巻き込まれないで。

 大丈夫、きっと大丈夫。雲嵐は山や草っ原を見に行っただけ。軍の目的は都。あの街は通り過ぎる。


 ……。都まで馬で1日の場所。軍は野営するかも。


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