最前線の捨て駒隊
「まず、報酬をもらわないとな」
「そだね」
「オレ、戦んとき、けっこー頑張ったんだ」
雲嵐は大河河口で軍に合流した。50名ほどの寄せ集めの隊。ガラの悪いイカツイ漢ばっか。私と同じ歳の雲嵐は、明らかに1番若手の下っ端。
「オレ、ちびるかと思った」
戦が始まると、雲嵐の隊は最前線に配置された。やっぱ捨て駒だったんだね。
2隻の外国船から、小船を使って兵士達が攻めてきた。雲嵐は、敵兵の腕を撃った。2発命中したところで、隣にいた味方の兵士が、銃の準備専属になった。銃口から弾丸を押し込み、撃てる状態にした銃が渡される。雲嵐は撃つことに集中できた。
上官に「殺せ」と命令されても、腕だけを狙った。
「敵だってさ、下っ端は戦いたくて戦ってるわけじゃねーじゃん。オレらと一緒。食うためだったり、オレみたいに事情があったり」
上官は、言うことを聞かない雲嵐に自分の剣を突きつけた。
「したら、仲間がソイツを蹴飛ばしてボコしてくれた」
あーん。怖いよー。
外国船4隻のうち2隻は、河口からの上陸を諦め、大河を遡って行った。
雲嵐の隊には、河の者が大勢いた。漁師もいた。その者達は、央の国とは違う船の構造を知りたがった。なので、2隻の外国船を拿捕するとき、1隻には大砲を撃ち込まないでほしいとお願いした。
「お願いしたんだ?」
「脅してた」
ガラ悪っ。
雲嵐達の後ろにいた隊は、敵兵を捕獲し、央の国の船に乗せた。
「船に詳しいヤツらが『かっけー』って外国船に乗りたがってさ。テンション高くて、オレら乗っちゃったわけ。帆の操り方とか『こんな感じ?』みたいにして、出航した。マジでびびった」
「上官はもっとびびったよ」
「あ、もうボコられて離脱してっから」
「……」
ハイテンションのまま、乗り込んだ外国船で先に行った2隻を追った。大砲の使い方を知る者はいなかった。けれど、銃と同じではないかと「こんな感じ?」みたいにして雲嵐が試し撃ち。
「思ったより遠くへ飛んだ」
へー。
とてもお腹が空いたころ、誰かが敵の食糧を見つけた。カチカチのビスケット、パサパサのパンを食べた。肉の塩漬けはあまりに不味そうで、料理する気にもならなかったのだそう。
料理? なんか余裕。
「指揮する上官いないのに、どーやって戦ったの?」
「ノリ?」
2隻の外国船は、大河と大運河が交わる辺りで央から挟み撃ちに遭っていた。前を進んでいた1隻が攻撃されているとき、後ろの1隻は方向転換をした。攻めて来た央の船に大砲をぶっ放しながら、河口の方へ逃げる。そこへ、雲嵐の隊が乗っ取った外国船が通せんぼ。大砲をお見舞いした。
誰かがロープを揺らして敵の船の甲板にお猿さんのように飛び移る。「オレも」「オレも」とウエイ系ノリで移り、長旅+慣れない土地での戦いで疲れていた敵兵を捕らえた。
雲嵐って、意外と適応能力あるんだね。安心したよ。
戦いが終わって休んでいたところに、河口から央の船で運ばれた捕虜が到着。しかし、央の船は乗っ取られていて、戦いが再燃。敵は、たった今捕虜になった仲間を解放し大暴れ。
「そのとき、牢が火事で、香香を逃したって誰かが言ってた」
「すごくお世話になった人なんだよ。下の下の下の仕事んときから」
鞭打ちのカモフラージュもしてくれて。
「いい人ばっかだよな」
「うん。私もそー思う」
「隊も、いい人ばっか。見た目怖いけど」
「ふふ」
「だから、あんま、モテてなかった」
ん?
「モテ?」
「軍の官庁に女の子いっぱい来てたのに」
「あれね」
「いい鎧着てる人とかがモテてた」
判断基準は、金持ってるかどーかなわけね。
「ふーん」
「隊のヤツら、物欲しそーに女の子見てた。オレら、怪我人いねーし、鎧しょぼいし、汗臭いし」
なんと、最前線の捨て駒だったのに怪我人がいないって。どんだけ強いわけ。
「あははははは」
「香香、笑わなくても」
おっかし。無事でよかったよ。涙出てきた。




