猛禽類女子男狩り
「ホントにいたんだー」
「つまんなーい」
「狙ってたのに」
口々にいろいろ仰る皆さん。
「あの、あなた達は?」
何してんの?
「ボランティア。怪我の手当したり、ご飯作ったり」
「ってのは口実で、婿探し」
「一緒にやらない?」
「もっといい男、見つかるかもよ?」
ノリいーなー。
「あはは。雲嵐の無事を知りたかっただけなので。あ、雲嵐がお世話になります」
「もっと濃密にお世話したい、と・こ・ろ」
雲嵐、気をつけて!
そこへ建物の中から、逃げるように李氏様が出てきた。外にいた女の子達は、「オジじゃちょっと」と李氏様をオジサン認定で片付ける。どスルーして、ぞろぞろと建物の方へ歩いて行く。
たぶん、ボランティアのメンバーには年齢幅があって、外に出てきたのは若手。さっき、李氏様がきゃーきゃー言われてるの聞こえたもんね。
「なんだあれは……」
「ボランティアだそうです」
「明らかに男狙いじゃないか」
「分かりやすくていいじゃないですか」
「世が変わるというのに」
そーねー。このどさくさに紛れて、いつもは知り合えないイケメン有望株を探すのは理に適ってる。しかも、出逢いは傷ついた兵士の手当に行ったとき、、、なんて運命的な響き。
下の下の下の檻なんて出会い、今、上書きしよっかな。
「麗」
上半身を現にしたまま、雲嵐が走って来た。小脇に上衣を抱えて、濡れた髪のまま。
開け放たれた官庁の大きな扉の中では、さっきの女の子達が、雲嵐のガリガリの肩や肋骨が隠れる程度の薄い胸板に、明らかに幻滅してる。しょぼって心の声、聞こえるし。
「お疲れ様、雲嵐」
「大活躍だったそうだな、雲嵐」
「おはようございます。麗、よかった。無事だったんだ。昨日、安全のために香香を逃したって聞いて」
「え? 雲嵐、戦場で聞いたの?」
「うん。後から来た人が喋ってた。李氏様、麗はまたどっかの牢に入れられるんですか?」
「それはない。こうなった今、もう、香香の罪状がない」
「やった! 麗」
雲嵐は思わず私を抱きしめようとして、手を止めた。人目があるから。輝く笑顔でガッツポーズ。私を釈放してもらうために頑張ってくれたんだもん。
「雲嵐。よかった」
「皇帝はお逃げになったと聞きました」
雲嵐の言葉に、李氏様は悲しい顔で首を横に振った。
「崩御されたそうだ」
雲嵐は言葉を無くし、宮廷に向かって姿勢を正す。そして、目を閉じて黙祷を捧げた。直では知らない人の死を悼む雲嵐を、不思議な気持ちで眺める。
民衆にとって、皇帝は憎しみの的なんだと思ってた。
そして、ふと気づく。皇帝が崩御されたというとは、
「央の国を守るために戦った人への報酬って、払う人、いないんですか?」
思わず質問。大問題。
「しっかり検討しなければな。雲嵐、戦に、どこの誰がいたか、解散した後も分かるよう、記録してもらいなさい。軍にいる兄に話しておく」
「はい。お願いします」
李氏様は気を利かせたのか、法部門の官庁の方へ消えた。
「ありがと。私のことも考えてくれて」
さりげなく雲嵐に上衣を羽織らせる。早く服、着て欲しいかな。痩せてても、私的には筋肉質で色っぽいから。猛禽類女子から身を守るために。
「麗のことしか考えてない。戦の報酬貰ったら、2人で家探して一緒に住もう」
「雲嵐」
それって、プロポーズ。
「お金なら、私も」
前に住んでたとこから持って来たお金や下の下の下の報酬の証文がある。取りに行けないかもだけど、西の国境付近の両替商のオヤジに預けた金もある。
「麗がオレより持ってるのは知ってる。それじゃ嫌なの」
最後に、しばしの別れの挨拶をして終わり。雲嵐は手を振って見送ってくれた。胸板を育成する前提の、「育てて食う」的猛禽類女子がいるかも。雲嵐、早く逃げて。




