国内外予測不可能
「私、翠蘭に李氏様の無事を確認してくれと頼まれて、ここに来ました」
「翠蘭が。私を」
「はい」
愛されてる自信がないヘタレ李氏様は、それを聞いて元気を取り戻したっぽい。どう見てもヨレヨレ姿なのに、立ち上がって姿勢を正す。
「私はこの通り、無事だ。翠蘭に伝えてくれ」
顔までキリッとさせる。
「雲嵐を見かけませんでしたか? 軍の官庁にいると聞いたのですが、さすがに、行きにくいです」
軍って女人禁制なイメージ。
「では一緒に行こうか」
「お疲れのところ、ありがとうございます。まだまだお忙しいですよね?」
「まあ忙しいが。この後、私は一度帰る」
翠蘭に会いに?
「これから国は、どうなるのですか?」
「嵐が過ぎたから、皇帝が戻っていらっしゃるだろう」
「いえ、皇帝は」
赫々然々と説明した。
「そうか。では、本当に新しい世が来るのだな。導き通りだ」
導き。
ーーー最も下位の女の声が国中に響くとき、
この国は新しく生まれ変わるーーー
偶像、下の下の下の香香の声。
李氏様と2人で軍の官庁に向かう。広場には、朝一よりも人が増えていた。
「演説してる人が、北の方から攻めて来るかもって言ってました」
「確かに、その可能性はある。この騒ぎに乗じて誰かが央の国の統治者になることは不可能じゃない。が、都では受け入れられないだろう。そうすると、力で民衆を抑圧することになるな。問題は山積みだ。高原地域では、皇族の統治者を幽閉して自治を行っているまま」
「それもありましたね。それって、こっちから助けに行ったりしてないんですか?」
「農民出身の兵士が寝返ったことでそうなったから、こちらから出兵する者を選別していた最中らしい。そしたら外国船が来た。ま、それは表向きの話で、皇帝はその統治者が殺されるのを待っていらしたという説もある」
「え?」
「人質を取られたまま戦うのは不利だから。統治者の代わりはいる」
「そんなものなんですね」
人の命が軽すぎ。
「力がある皇族というなら、北部の統治者だろうが。はぁ」
「餓死で民が減ってるなら、北部の軍勢は小さくなるし、戦費の調達にも事欠きますよね。今は夏。そろそろ小麦の収穫時期でしょうか」
だったら農民を兵に借り出すのは避けたいっしょ。もし豊作でも、収穫が終わってなかったら兵糧を用意できないじゃん。馬糧だって必要。
「まあ、北部が軍勢を率いるのは難しいだろう」
「北の国が攻めてくるって可能性はあるんですか?」
「北の国からの進軍は、いつでも可能性がある」
書物も語ってた。侵略続きの歴史を。あの国、チート過ぎ。
「攻めないから金よこせ、嫁よこせって。ゲスい国」
オラオラもいいとこ。
「麗、それはちょっと違う。あの国は央の国と貿易をしたい。だが、自国には輸出できる物が少ない。獣や魚は獲れるが、運ぶと腐る。だから南に来たいのだ。嫁の件も、強い繋がりを求めてのこと」
「そうなんですね。ただの野蛮な民族だと思ってました」
「第七皇女の婚姻の件はどうなるのだろうな。皇帝がいないとなれば、有力者の娘ではない。北の国にとって有益ではなくなる。西の国に嫁がれた第2皇女も然り」
そんな話をしていると、軍の官庁前に到着。私は外で待ち、李氏様に様子を見に行ってもらった。
建物の中からは、白米が炊ける匂いや、肉とタレが焼ける匂いが漂ってくる。朝ご飯? 戦の後だもんね。ガッツリいきたいよね。
……。なんか、女の人の声が聞こえる。笑い声も。しかも大勢。李氏様にきゃーきゃー騒いでる。
1人、同じ歳くらいの女の子が建物から出てきた。
「雲嵐なら、今、湯浴みしてるよ。カノジョ?」
「はい」
きゃっ。肯定しちゃった♡
あら? なんか、いっぱい女の子が出てきた。




