蜂起歓声正面突破
「「「うちらのぉ米はうちらで食べよ
取られた米ならぁ取り返せ〜♪
増税官僚太った皇帝
うちらの米でいい暮らし〜♪
香香香香ンンン下の下の下〜♪」」」」
歌を聴いた皇帝は「太ってなどおらん」と憤慨。え、反応するとこ、そこ?!
そして次の言葉は。
「陳を呼べ。陳はどこだ。こんな一大事になぜ朕のところへ来ない!」
すぐさま近衛兵が頭を低くしながら答えた。
「内閣府長は、軍部に詰めておられます」
「いいから呼べ!」
「は!」
近衛兵が走って階段を下りて行った。
「香香、お前を差し出したら、こいつらは収まると思うか?」
「分かりかねます。私にはなんの力もありません」
「差し出したところで、味を占め、次の要求が来る。人間とはそうしたもの。お前を皆の前で見せしめに処刑したらどうなるだろうな。これだけの騒ぎの張本人だ」
「……」
処刑。
ああ、風が温い。
「まるで祭のようだな。祭りの後、民衆は満足し、疲れ、次の日からまた真面目に働き始める。同じように、今夜騒いで、満足し、明日からまた働けばいい」
それくらい呑気な希望的観測の方がありがたい。殺されずに済む。
しばらくすると、汗だくの陳氏が現れた。べったりと乱れた髪から3日ほど湯浴みしていないと想像できる。寝てもいないのか、目の下には隈。痩けた頬に目がギラギラと輝く。
「お待たせ致しました」
「敵はどうなっとる。2隻は大河河口で拿捕し、もう2隻は大運河のところで挟み撃ちにしたのではないのか! 捕虜が逃げたとはどういうことだ」
「申し訳ありません。大河河口で捕らえた捕虜を運ぶ途中、船を乗っ取られていました。戦を終えたと油断していたところに、都の河港から一気に攻め込まれました」
「今は」
「はい。ただいま、こちら側が優勢です」
「優勢に決まっとろう。長旅の捕虜の残党などせいぜい50人」
「いえ、150人以上です」
「変わらん。それくらい、さっさと片付けろ」
「大砲で攻められた上、味方を盾にされました」
「こっちは大人数だ。味方の10人や20人殺したって、攻めればいいだろうっ」
上の人間なんてこんなもんなんだ。下々の者はただの駒。10人死んでも、1万人死んでも勝てればいい。自分以外の人間に人生があるとか、周りの人が悲しみに暮れるなんて想像もしない。
「現在の戦況が分かりません」
「さっき優勢だと言ったではないか」
「はい。日が暮れ、南の櫓から見えな、」
陳氏が言い終わらないうちに地鳴りのような歓声が沸き起こった。それは足の下を通り抜ける。
手すりから身を乗り出して見れば、人々が正門へ吸い込まれて行く。
「早くあの者らを捕えろ!」
皇帝が怒号を飛ばす。
宮廷の塀の内側を振り返ったとき、下からオレンジ色の光が揺れていた。松明。見る見るうちに明るさが増していく。群衆が次々と門を潜っている。
「お逃げくださいっ」
陳氏が叫んだ。
「くそっ。皇子を連れてきてくれ」
そう言い残すと、皇帝は一目散に広い塀の上を走っていく。近衛兵数名も共に。
翠蘭!
塀の上、皇帝とは反対方向へ走る近衛兵を追った。皇子を連れてくるよう頼まれた者。
「皇帝の寝所はどこですか?」
「ついて来い」
民衆はまだ、2つ目の門まで辿り着いていない。歌いながら行進している。塀の遙か下、皇帝しか歩いてはいけないと言われる中央を、松明と共に堂々と進む人々。歌と共に、玉砂利を踏む音がざっざっと響く。
「後宮の人達はどうするのですか?」
「助けるのは皇子とその息子だけだ」
「そんなっ」
瑞華様、どうかご無事で。
走りながら場所を教えられ、途中で分かれた。近衛兵が向かう場所は後宮の奥。皇帝の寝所はその手前。




