寺ってそーなの?
現れたのは、黄色の絹に包まれた「河港使用許可証」。裏の番号は「一八」。そして竹筒。中身は西の国の文字が書かれた紙が入ってる。は? 西の国の皇帝から。本物? 偽物? 読んでる余裕ナシ。
一介の官僚に、西の国の皇帝から文が届くのはおかしい。ってことで懐にIN。
扉の向こうでは姐さんが陳氏に説明してる。
「ターゲットは法部門の建物というよりも、牢です。香香の解放を叫んでいるのですよ」
まさか、引き渡される?
「ああ、いたな。噂が一人歩きした下の下の下が」
どきっと心臓が揺れる。
「お話があって参りました。我々は、もう仕事を受けません。もともと僧だった身。世のため、国のためと言われて従いましたが、良心というものがあるのです」
「ふっ。これは面白い冗談を。戦場の英雄のごとく人を殺めておきながら。命を受けたと言い訳をするな。すると決めて殺ったのはお前達だ。今更、僧なんて引っ張り出すとは。ふっ」
姐さん、細マッチョ、ゴリマッチョは、今まで何人も殺してきたっぽい。
「我々は、全ての罪を自白します」
「どうぞ。誰も信じない。信じたとしても、誰も何も言えまい。だいたい、逃げて来たなら、裁判で訴えることができないだろ? それにな、お前達だけが汚れ仕事をしていると自惚れるな。ふっ。最も苦しい死を与えてやろ、ゔっ」
突然の静けさ。温い空気が体にまとわりつく。
息を止めていると、外から扉が開けられた。
「香香、終わったわよ。おいで」
「え、終わったって」
まさか。殺した?
陳氏はゴリマッチョが担いでる。
「気絶してるだけさ。まだまだ苦しんでもらうからよ」
ゴリマッチョは背中を向け、私に陳氏の顔を見せてくれた。ふつーのおっさんに見える。
3人は、廊下を堂々と、ゆっくり歩いて行く。陳氏の薄い髭がふわふわ揺れる。
「急がないんですか?」
「そんなことしたら、足音が響くわよ」
なるほど。
「どこへ行くんですか」
「出口」
「その後は?」
「香香は広場に行きなさい。この外交の官庁なら火事はないはず」
「そんなことしたら、私」
捕まっちゃう。
「目立たないように着替えたでしょ? 民衆に紛れるの。今ならみんなは、牢に行ってるはず」
「皆さんは?」
官僚なんて担いでたら、目立つ。
「アタシ達は、まず、このお土産で金満寺の住職を脅して、身の振り方を決めるまで潜伏するわ」
「心配するな。あの住職は、オレにぞっこんだから」
細マッチョは自信満々。
「ま、住職がジタバタしたら、捕獲して、オレらが金満寺を乗っ取るさ」
「そーね。あそこ、ホント、外からは猫の子1匹入れない要塞だから。あの子達は、ちょっとは上達したのかしら」
上達?
「何がですか?」
「金満寺はね、軍事訓練の場でもあるの」
「姐さんとオレは、腕を買われて別邸の方へ回された」
「オレは、住職に気に入られただけだけどな」
姐さん、ゴリマッチョ、細マッチョは、金満寺のもう1つの姿を教えてくれた。李一族縁の寺でも、僧は兵みたくなってるし、寺ってそーゆーもんなんだっけ?
あ、前から人が。と思った瞬間、細マッチョが鳩尾を突いて気絶させる。
建物の出口が見えてきた。
「そういえば香香、なんで、アタシらの住んでた屋敷にいたの?」
「金満寺の住職が悪いことしてるのかなって気になって」
「ま、ね。世間基準ではアタシらの方が悪いんだろーけど。住職は結構な悪党よ。だから、ふつーのレディは首突っ込んじゃダメ」
「レディなんて初めて言われました。下の下の下なのに」
「アタシは見たまんまを言ってんの。女同士だから分かるわよ」
「……」
「門には見張りがいるから、あっちの扉からお逃げ、香香」
「はい。ありがとうございました。ご無事で」
火事に巻き込まれたら危ないって思って檻の鍵渡したんだけどさ。この人達、殺人犯なんだよね。……内緒にしとこ。




