表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
118/253

出自

[お兄ちゃん、ここだけの話、李氏(りし)様がこっから出してくれることになってるから。大丈夫]



 自信満々に告げると、キラに否定された。



[ムリっしょ。法に携わってる官僚が。一族ごと、清廉潔白らしーじゃん。李氏様がサディストって以外、変な噂ナシ。できねーできねー]


[お兄ちゃんもそー思う?]


[んー。一応、こっちからも手ぇ打っとく]


[買われるのは嫌。お兄ちゃん達はもう逃げて]



 雲嵐(うんらん)と一緒になりたいのに、他の男に買われるなんて論外。



[もうしばらくいる予定]


俊熙(ジュンシー)には他にもやりたいことがあるんだよな]


[それはキラもだろ]


[え、お兄ちゃん、なんかあんの?]



 お兄ちゃんにも好きな人がいるとか。実は(おう)の国の人とか?



[うまく行ったら報告する]


[うん。聞かせてね]



 約束。


 ところで。せっかく兄につけて貰った名前、「(リー)」だけど、香香(シャンシャン)ってバレて捕まっちゃったから、もう必要なくなった。



「……」


「せっかく名前つけてくれたのに、ごめんね。お兄ちゃん」



 黙り込むなんて。そこまで拗ねなくても。



「あのさ、麗」


「ん?」


「リーなんだ」


「え?」


「お前の名前。本当の名前はリー」


[おい、、、俊熙(ジュンシー)



 隣でキラが驚く。キラの視線は「知っていた」ことを物語っていた。


 そこから兄は、周りの人に分からないよう、西の国の言葉を使った。



[麗が幸せなら、何も知らなくていいと思ってた。だけど、ずっと気にしてるって分かってたし。もう、大丈夫だから]



 そして兄は、淡々と語り始めた。


 兄が5歳のとき、西の国が攻めてきた。



[お兄ちゃん、誰に聞いても、そのとき、央の国と西の国は戦をしてなかったよ?]


[チスタンと西の国の戦]


[私達はチスタン人だったの?]


[うん。民主制の国だった。国の人みんなが字を読めて書けて、自分の意見を話せて、身分の上下がなかったんだ]



 いつかキラから聞いた理想の国。


 チスタンの民主制を整備したのは元国王とその側近だった。最後の国王の孫が私で、兄は側近の孫。西の国が攻めて来たとき、戦火の中、兄は自分の父親から「命に変えてもお守りしろ」と私を託された。


 東へ逃げるよう言われた。そのときはただ言葉に従っただけだったけれど、大きくなってから理由が分かった。西には西の国の領土がどこまでも広がっている。東は西の国の部分を過ぎれば、央の国があった。そして、チスタン人の見た目は、央の国の人間に似ていた。西の方へ逃げていたら、目立って捕えられてしまっただろう。



[お兄ちゃんだって、まだまだ小っちゃかったのに。オムツとか替えてくれてたの?]


[なんも履いてなかったから、大丈夫]


[へー。合理的]



 西の国の国境付近へ行くと、汚い姿の子供がいっぱいいた。後に戦争孤児だと知った。兄は私を連れ、戦争をしていない平和な地で、戦争孤児として暮らし始めた。


 私の名前を隠していたのは、西の国がチスタンの元王家を根絶やしにしようと狙っていたから。君主制で支配する地に、民主制の残棍があっては不都合だった。


 なんか不思議。語り部の彩雅(ツァイヤー)の作り話みたい。

 フィクションでは、私は西の国のお姫様だった。後宮の陰謀で央の国に売られて()()()になった。

 君主制が廃止された国だったとはいえ、元王家の娘だったなんて。



[リーのケツのは、家の刻印。生まれたときに押されるんだ]



 元王家の慣わし。赤ちゃんだった私、きっと痛かったよね。



[そーだったんだ]



 兄は、実の妹じゃない私の誕生日を知らなかった。



[お兄ちゃん、ありがとう。言葉では言い尽くせないよ]


[オレの方こそ。リーがいたから頑張れたんだ。リーが、いなかったら、盗みも暴力も平気な人間ンなってたと思う。お前を育てることがオレの誇りっつーか]


[……お兄ちゃん]


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ