華港沖外国船渡来
人はいろいろな面を持つ。
周りから長寿の桃源郷と呼ばれた地を思い出す。
ーーーオレな、なんで早う楽にしてやらんかったんやろな。「死なせて」ってゆーとったのに。痛い辛いって呻いとった。親、あんな苦しませて、オレは酷い息子や。1日でも長生きさせてくれって医者に頼んでーーー
葬式饅頭を注文に来た孝行息子は、親が亡くなって泣いていた。50歳くらいのおじさん。
1日でも長く一緒にいたくて親を長生きさせたのも、国からの補助金、長生き金を貰うために長生きさせたのも、死の床で苦しむ親を見るのが辛かったのも、やっと治療を止めたのも、その男。
陳氏はきっと、私と話すときは、真に民のことを考える善良な政治家になっていた。装うのではなく、心から。
でもさ、その一方で私服を肥やしてる。
官僚は、政治をするのに潤滑油の心付けが要る。金は力。それに吸い寄せられる人がひれ伏す。
陳氏はどーしてそんなに金が欲しい? もう十分にそのための金はあるのに。官僚のトップ、内閣府長に登り詰めて、皇帝に進言し、聞き入れられなければ独断で実行するほどの財力と権力。
純粋に金が好き? 私みたいに。
皇帝よりもお金持ちになったところで、使いきれないじゃん。どっかに眠らせとくしかない。そんなの、必要?
朝、牢では、桶に1杯の水と1枚の布が渡される。顔を洗い、口を濯ぎ、体を拭くと教えられた。外から丸見え。体を拭くなんてとんでもない。ここは軽犯罪者を一晩反省させるために過ごさせたり、裁判まで一時的に収容するだけの場所。男女の別もない。流石に役人は、男女を同じ檻には入れないけど。
朝食の後、オバハンやその他何人かは牢を出て行った。
下の下の下の檻の広場で捉えられた人達から握手を求められた。
「私、みんなが思うような香香じゃありません。国がどーとか、身分がどーとか、そんなのどーでもよくて。ただ、前みたいに静かに暮らしたいなって。それくらいしか思ってなくて」
そう言ったけど、民主制とか平等とか国家とか難しいことと一緒に、何人かは自己紹介をしていった。どーでもいい。
北部の飢饉のことを話す人もいた。陳氏が素晴らしい人間ってことになってたのが、めっちゃ悔しい。
私も早くここから出て、雲嵐とこ行きたいな。
そしたら、今度こそ何もしない。平穏に暮らす。
「今日の午後辺り、裁判だと思うぞ」
役人に言われた。
そこへ別の役人が走って来た。
「おい、華港沖に外国船が来たってよ。交代すっから、すぐ体休めろ。いつでも戦えるようにしとけって」
外国船が? キラと兄から話を聞いて、それほど経っていないのに。
あ、そっか。キラと兄が都まで旅をするのに何日もかかってるんだった。列強諸国と西の国は離れてる。西の国のキラの耳に入るまでにも、かなりの日数があったはず。
しかも、2人は私を探し、暴動に参加しながら都まで来た。それを考えると、外国船が困難な海路を経て辿り着くのに十分なのかもしれない。
「オレらって、どの辺へ行かされる?」
「まだ聞いてない。船の訓練に呼ばれてねーから、陸だろ。この辺か、大河の河口辺りの陸上じゃないかって」
「すぐ、仮眠取る」
朝までの勤務だった役人は、険しい顔で帰って行った。
「攻撃されたのですか?」
交代した役人は、首を横に振った。
「オレが聞いたのは、沖に来たって話だけ。4隻だってよ。もう、央の国は、すっげーでかい船に大砲並べて、いつ撃ってきても迎撃できるようになってるってさ」
燈実パパが動いたんだ。
「外国の船は小さいのですか?」
「こっちの船がでかいからな。なんてったって、船の上に畑まであるから」
「すごいですね」
じゃ、大丈夫なのかな? これまで植民地にされてきた国々とは違うよね。央の国って世界で1番強くて優れた大国って書物に書いてあったし。




