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獄中春巻き皮密書




 雲嵐(うんらん)の後には、燈実(とうみ)様と御者が来た。



「よ、(リー)。差し入れ」

「食ってねーだろ?」



 牛肉♡ きっと、御者が金満寺の妾の家で作ったやつ。めっちゃ美味しー。


 頬張っていると、すっと膝の上に白いペラペラした物が置かれた。燈実様は、口の前に人差し指を立て、しーっとジェスチャー。

 白いペラペラしたのは、春巻きの皮。小さな文字が書かれてる。なになに。


* 牢からは助け出す予定。


* 李氏様邸を勝手に抜け出して危ないことをしたので、お仕置きのため、2、3日牢。


* 金満寺の住職の悪事については内々の調査。役人達は、殺人事件と思っている。


* 法部門で、金満寺にあった芸術品と、2年前の東の国へのお土産リストを調べている。現在、2点、一致するものを発見。


* 隠し部屋にあった文机の中の帳簿も調査中。表向きは殺人事件の捜査なので、隠し部屋は施錠してある。文机を持ち出すときに施錠したので、殺人事件担当の役人達は隠し部屋のことを知らない。



 読み終わると、即、食べかけの牛肉を包んで食べた。春巻きは揚げて食べる物だけど、生でもイケる。


 御者は役人の帽子でツルツルを隠しながら話す。



「バラバラの方さ。あれ、小船であの屋敷に荷物を運んだ人間が、口封じで殺られたんじゃないかって推測。3人分あった」


「う”っ」



 肉食べてるときに、「*人分」なんて言い方やめてー。


 3。突然、ばっと頭の中に景色が広がった。青い夜。暗い中、支流に入って停まった帆船。それは3艘の小船に吸い寄せられるように向かって行った。風が荒れた。踊る帆。星。水面。水路から出てきた小船。3艘だった。


 キラと兄が小船を追って欲しいと頼んでも聞き入れられなかった。「首がなくなる」と言われた。知ってたんだ、殺されることを。


 3艘の小船を漕いで金満寺の妾の屋敷に箱を運んだ3人の船頭は殺された。小船を元の場所に戻したのは、女装、細マッチョ、ゴリマッチョ。あくまでも推測。

 船で危なく怪しげな仕事を請け負うのは、河の者。殺されたのはオバハンの知り合いかもしれない。



「数日中に裁判って聞きました。自分で捕まっておいてナンなんですが、ホントに出られるんでしょーか?」



 私が木から降りた時点で、李氏様と燈実様がなんとかしてくれると思っだんだよぉぉぉ。



「裁判までに逃すから」



 燈実様が約束してくれた。

 期待はしない。調印のときの「絶対守る」って、力一杯言ってたのに、キラに拐われたから。



「あの、お願いがあります」



 隣のオバハンの話を聞いてほしいと頼んだ。燈実様と御者ならなんとかしてくれそう。自分らが考えた作戦のせいでもあるし。ついでにオバハンに差し入れの牛肉をお裾分け。



「すみません。考えが足りませんでした」



 燈実様が謝ってる。御者は早速、対策を考えてるふうだった。



「ただ、気まぐれであの場所を使ってるわけじゃないことは理解してください。皆さんが安全に暮らせることを考えます。商業船の持ち主らとも、こちらで相談しておきます」



 オバハンに訊いてみたいことがある。



「あの、ちょっと前から姿を見ないなーってご近所さんはいますか? 3人くらい」


「どーかねぇ。若い者は出入りが多いから。定住してないし」



 そっか。

 私が何を知りたかったか察した御者は、具体的に質問した。



「大河の支流から繋がってるとこに、でかい屋敷があるんです。そこで殺人事件があって調べてるんですよ。何かご存知ですか?」


「ああ。あそこは関わっちゃいけない。そんなこと、古い者は知ってる。金に釣られた新参者だろ」



 オバハンの言葉から、今回だけじゃないことが分かる。

 燈実様は(おぞ)ましさに一瞬顔を歪めてから、感謝のお辞儀をした。



「貴重な情報をありがとうございます。調査します」




 夕食は、うーっすーいお粥だった。差し入れあってヨカッタ。




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