優男久々異能発揮
燈実様は女の前に掌を差し出す。
「鍵を」
「知らないわよ。ちょっとぉ。アンタ達、そっちの盗人男に訊きなさいよ。なんで鍵がいるわけ? アタシが鍵持ってたとしたら、ソイツは盗んだ金獅子香炉? だっけ? それ、そこに仕舞えないじゃない」
ごもっとも。捜査方法が強引すぎ。
言われてしまった、燈実様はツルツル御者に尋ねる。
「おい、どこへやった。っ。っぷ」
燈実様、笑い堪えるのに必死。堪えきれてないし。
「知りません」
「とぼけるんじゃ、っぷ、ない。では、お前の、んーっと、部屋を調べよー」
あかん。燈実様、芝居下手すぎ。
見かねた李氏様は燈実様を扇子で突つく。
「燈実」
李氏様は、扇子で細マッチョを指す。ええ?
ここは金満寺の土地。どうも住職の別邸っぽい。だったらお宝の管理は、住職の妾がしているはず。
「え?」
燈実様も戸惑ってる。それでも御者を連れて建物の中に入って行った。
しばらくすると、燈実様が走って戻ってきた。手には螺鈿細工が施された鍵。驚いた細マッチョは、鍵を開けられないよう、文机を体で覆う。
「この中にはない! 鍵、どこから持ってきたっ」
「やはりな。この男だけが」
李氏様の呟きを、私は口の動きから読み取る。
そーゆーことね。久々の異能発揮。
たぶん、金満寺の住職には男性経験の数字がない。そして、女、細マッチョ、ゴリマッチョの3人の中で、細マッチョだけに数字があった。だから細マッチョが住職の妾。
役人は細マッチョを取り押さえ、文机と鍵を運んでいく。
すんすんすん
ところで、さっきから、異臭がする。昨日嗅いだ臭い。
と、木の下をガオがととととっと走って行く。
そして、李氏様の前に何かを置いた。
「うわぁっ」
李氏様が尻餅をついた。
「「「「うわぁっ」」」」
場が騒然となる。ガオと共に数人の役人が私のいる木の下を通り過ぎ、芸術品コレクション部屋のもう一方の窓がある方へ建物の角を曲がっていく。なんだろ。
「なんか掘るものないか?」
声が聞こえてくる。
じーっと木の上から声の方を見ていると、うろうろしてた役人の1人と目が合ちゃったよ。
「何をしている!」
「あ、こいつ、香香だ」
「賞金首だぜ」
「降りてこい」
李氏様と燈実様がいるから大丈夫。堂々と木から下りたんだよね。そしたら、フツーに捕まっちゃったんだよね。助けろよ!
2人に知らんぷりされた。全く他人のふり。酷い。
屋敷を出ると軍の荷馬車があった。それに乗り込もうとしたときだった。
「麗!」
「雲嵐」
「どうしてっ」
「ごめんね」
心配ばっかさせて。
後悔。
なんで屋敷に入っちゃったんだろ。なんで逃げなかったんだろ。なんでなんで。……銀を確認したくなった。不正を暴きたいって正義感はほんのちょっとだけ。好奇心が抑えきれなかった。
女装ボス、ゴリマッチョ、星マッチョとは別の荷馬車で運ばれた。運ばれるとき、役人にいろいろ聞かされた。
御者が囮だったこと。それ、知ってるし。
灰色狼を連れた猟師が、この屋敷を調べてくれと言ってきたこと。雲嵐だったんだね。きっとガオが私の匂いを辿ってくれた。
異臭はバラバラ遺体の腐敗臭だったこと。それが分かったのは、ガオが人の指を持ってきたから。怖っ。私、そんなとこで一晩明かしたんだ。昨晩埋め直していたのは遺体。
女、細マッチョ、ゴリマッチョはバラバラ遺体の容疑者として捕まった。
「あいつら全員、元、金満寺の僧だったんだ」
役人の1人が言う。じゃ、私が女と思ってたのって、男!? そーいえば、御者は女って言わなかった。「ボス」って言っただけ。
殺人事件という名目で、屋敷を思う存分調べることができる。
金満寺の住職の不正が暴かれるのは時間の問題。




