金獅子香炉窃盗犯
「窃盗犯を匿っているんじゃないだろうな」
燈実様の声がする。どーしたんだろ。窃盗犯?
「突然、無礼ではありませんか」
ハスキーボイスの女は不自然に大声を出している。それはきっと屋敷の中にいる者に知らせるため。
「探すぞ!」
ん? 今の声って、李氏様。なんで?
数人の足音がどだだだだと聞こえてきた。
窃盗犯って誰のこと? ちょっと待った。私って見つかったらヤバいんじゃね? 運よく李氏様か燈実様に見つかれば、なんとかしてもらえるかもだけど、それ以外の役人に見つかったら捕まる。なんたって革命の煽動者。賞金首の香香。
大急ぎで窓を開け、、、たら庭を突っ切って逃げる住職の姿が見えた。役人が追ってる。屋敷の中も役人が歩く物々しい音。一旦窓から出て、木に登った。葉が生い茂ってる中に鎮座。
はっはっはっはっはっ
木の下に激しい息遣いを感じて、見てみれば。え、ガオォ!?
そして燈実様が木の下に来た。
「そのままで」
と警告された。
「りょ」
住職は役人に追いつかれて逃げるのを止め、ぼーっと立っている。そこへ李氏様が近づく。
「これはこれは。大変失礼いたしました。実は、私の金獅子香炉が盗まれたのです。金満寺にお持ちした金獅子香炉を拝見し、優雅さに感動いたしました。そして、私も、小さくても素晴らしい逸品をやっと手に入れたというのに」
ペラペラと李氏様の舌が嘘を奏でる。
その様子を眺めながら、燈実様が木を揺らす。
「おーい。雲嵐が心配して半泣きだったぞ」
「雲嵐が?」
「こんなヤバいとこ来んなよ」
「さーせん。あ、そこの部屋、芸術品、いっぱいあります。ひょっとしたら、2年前の東の国へのお土産、あるかも」
「証拠がない」
「たぶん、帳簿つけてます。金屏風の後ろの部屋、文机があったんです」
私の言葉を聞くと、燈実様は李氏様のところへ走って行って耳打ちをした。
住職はぽっちゃりした頬を震わせている。
「李氏様は、なぜこちらへ?」
「家の者が、怪しい男を見たと言ったのです。それは、旅のときに雇った御者だったと。出家先の金満寺に行きましたら、その男は、別の場所へ行ったと言われました」
そこで李氏様は話を止める。ムリが生じた? 金満寺の人がこの場所を教えるはずないもんね。
「ほう。別の場所と」
住職の言葉は怒気を孕んでる。
「『最近、この辺りで人がいなくなったという噂がある』と、役人に連れられてこちらへ参りました」
人のせいにしたー! ムリあるし。
「なんと。役人が」
住職は忌々しそうに役人を睨む。
「ところで、住職はなぜこちらにいらっしゃっるのですか?」
「こ、ここは、金満寺が所有する土地でして。数年前、寄進されたのです。今は、この者達に貸しております。今日は説法をしに参ったのです。悩み、迷える者を1人でも多く救いたいのです」
「そうでしたか。そのような素晴らしい住職を欺く不届者がいるとは」
いつまで続くんだろ、狐と狸の茶番。
ちょうどそのとき、李氏様と住職の前に4人が連れてこられた。
女、細マッチョ、ゴリマッチョ、ツルツル御者。
「どの男ですか?」
尋ねられた李氏様は、扇子で御者を指す。役人がパタパタと御者を触る。
「何も持っていませんでした」
どんだけ小さい金獅子香炉やねん。
「では、この屋敷のどこかに隠したかもしれません」
と李氏様。
そこへ、燈実様が文机を担いで庭の中央に立つ。あれ、お宝があった部屋の文机じゃん。
「この机の鍵を出せ」
燈実様は、捉えられている4人に言った。慌てたのは住職。
「そ、それは、彫刻と螺鈿細工が施された、こ、こら、そのように扱っては精緻な彫りが……。!」
燈実様が文机を地面に「ほらよ」と乱暴に放り投げると、住職はパタンと気絶した。




