表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
108/253

白虎が守る銀と金

 息を潜め様子を窺う。

 なんか掘ってる?



 ザクリザクリ


   ザクリ ザクリ


  ザクリ ザクリ  ザクリ



 いつまで続くんだろ。眠……。




 明け方目覚めると、窓からの光で部屋はずいぶん明るい。

 昨夜、寝ちゃったのか。

 んーっと伸び。今のうちに逃げよ。


 部屋に列を作っている箱を避けながら、そーっと臭くない方の窓に近寄る。

 ん? この箱って。芸術コレクション? いかにも掛け軸が入ってそうな幾つもの縦長の箱が目につく。船底で見たような、高級な陶磁器が入っている風の箱もいっぱい。由緒正しそうな毛筆の文字入り。


 銀もある? ううん、ない。御者は出入りするとき、部屋に鍵をかけなかった。銀を保管してる場所なら、絶対に鍵付き。


 ここは金満寺所有の屋敷。だけど、所有者が住んでるのは金満寺。自分が留守の屋敷に大事な財産を保管するなら、信用できる人間を置く。だから妾なのかな。


 燈実様の調べでは、屋敷は金満寺所有。御者の話では、金満寺の高位の僧は別邸に妾を持てる。

 河港使用許可証と華港使用許可証を、元経済の副大臣、金満寺住職が受け取ったことを考えると、ここに住むのは、金満寺住職の妾。妾はハスキーボイスの女の人だと思う。


 あ、れ?

 兄が道で尋ねたとき、ここに住んでるのは還俗した元僧侶で、高名な人の妾って。高名な僧は金満寺住職だとして、還俗した元僧侶ってナニ?


 人の噂ってアテにならないわー。香香といい、元僧侶といい。

 

「逃げよ」と窓枠に足を掛けたとき、思った。リスク犯して収穫ナシかよって。ちょっと悔しい。


 窓枠に足を掛けたまま振り返ると、金屏風で白虎が笑ってる。

 よほどお気に入りなのか、金屏風の前に物や箱が置かれていない。


 なんかあれ、バリ怪しい。


 気になって、金屏風の後ろを見に行った。胸よりちょい下くらいまでの高さの扉がある。おおーっ、鍵付き。銀ここじゃね?

 

 南京錠を触っていると、遠くで話し声がした。



「今日はこちらで過ごされるのですか?」


「うむ。新しい男はどうだ? 役に立つか?」


「ええ。働き者です。あの者の料理が美味くて重宝しそうです」


「そうか、それはよかった」


「昼は、牛肉を焼くと言っておりました。今、タレに漬けてましたよ。酒もいいものを用意してあります」


「それは楽しみだな」



 金満寺の高位の僧。酒肉和尚の住職の声だったよーな。

 新しい男って、御者のことかな。料理上手? 知らんかった。

 足音が近づいてくる。

 まずい。部屋の前で止まった。


 咄嗟に隠れたのは窓と積み上げてある箱の隙間。(うずくま)って箱の間から様子を伺う。


 部屋の扉が開いた。



「臭うな」



 ぎくっ



 その言葉に背筋が凍る。見つかる! 殺し屋に殺されるかもしんない。



「すみません。埋め方が浅かったのです。昨夜、深くまで埋め直しました。もうしばらくすれば臭わなくなると思います」


「そうか。次回から、できれば、敷地内はやめなさい」


「分かりました」



 セーフ。私の臭いかと思った。

 昨夜埋め直してた物の臭いだったみたい。私の鼻が慣れちゃっただけで、部屋は結構臭いのかな。


 隙間から見える、黄色と赤の着物。その後ろで扉が閉められた。

 入ってきたのは、金満寺の住職。やっぱり。 

 鼻を袖で覆い、すたすたと金屏風の前まで歩いた住職は、立ち止まると、白虎に話しかける。



「お前は守神だ。今日も美しいのぅ」



 それから金屏風の後ろに姿を消した。かちゃかちゃと鍵の音がし、キィィと扉の開く音が続いた。


 しばらくすると、部屋の入り口で誰かが住職を呼んだ。



「お食事でございます」



 住職は食事に行った。逃げるチャンス。なのに、好奇心を振り切ることができなかった。見よ♪ さっき、住職が部屋を出るとき、鍵をかける音がしなかったよね。扉は開いてる。


 思った通り、自分の胸より下くらいまでの扉に南京錠はなかった。恐る恐る扉を開けると、窓のない部屋があった。薄暗い。入り口の扉からの光が頼り。

 蝋燭を灯していた匂いがする。文机の上には南京錠が置かれていた。部屋の壁の前に箱がびっしり並べて積み上げてある。どれも同じ大きさの、銀が10入る箱。数がやばい。

 1番隅の箱を開けた。銀、銀、銀。

 手前に積み上げてあった箱もオープン。こっちは金、金、金。すげー。


 こんなにもたくさんの(きん)、初めて見た。薄暗がりでも分かる輝き。小さな草鞋(わらじ)みたいな形の金が、整然と並んでる。


 文机があるなら、帳簿があるはず。帳簿帳簿帳簿は……。見当たらない。


 よし。いいもの拝んだ。逃げよ。


 音を立てないように注意して部屋を出た。窓のところまで行く。



「困ります!」



 突然の大きな声に固まった。何事?!

 声はハスキーボイスの女。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ