名案ツルツル内偵
塀の下の方が崩れてる。内側に木があり、塀の下に剥き出しの根元が見える。嵐のときにやられたのかも。塀の崩れた部分を足場に、よじ登ってみた。中を覗くと、庭を隔てて遠くの部屋に灯りが1箇所。
音を立てないよう忍び込むことに成功。男装してても服が邪魔だった。第七皇女が着てた黒づくめ、貰っとけばよかった。
こそこそと建物の中へ入ると、出くわしたのは、御者。
「「!」」
2人で仰天。声を上げそうになった口を塞がれ、使わない部屋に押し込まれた。
「なんか気配したから見にきたら。そこにいろ。絶対出てくんなよ。何もなかったって報告してくっから」
御者は、小声で言い残して消えた。
なんか、坊主頭に見えたけど、気のせい? 暗いから見間違えたのかも。
部屋は真っ暗。窓だけがぼやぁっと白く分かる。そのうち目が暗さに慣れてきた。普通の部屋を倉庫代わりに使ってるっぽい。出入り口は1つ。広い部屋は箱だらけ。
かなり経ってから、御者がやってきた。
「みんな寝た。でも、静かにしとけ」
「はい」
「で、なんでいる?」「なんでいるの?」
「私は単純に気になったから忍び込みました」
「オレは、こっちの仕事に回された」
「は? 軍事演習じゃなくて?」
「そーなんだよ。マジでムカツク、燈実のヤツ」
金満寺はいろいろと怪しい。李氏様は、御者か燈実様のどちらかが内偵に行くという名案を思いついた。燈実様は、李氏様と一緒に金満寺で住職に会った。顔バレしてるからと拒否。一方、御者は住職には会っていないし、別の者達にスカウトされてる。
「スカウトされたんでー、出家しまーっす」って感じで寺に入り込んだ。
「だからツルツルなんですね」
「うっせー。ちょっとは伸びてきたんだよ」
御者は金満寺に行った日、夜中に叩き起こされた。
「ま、さ、男ばっかのとこって、荒っぽい歓迎があるもんじゃん? だからま、従ったわけよ」
御者は着ているものを剥がされ、大事な部分を手で隠すだけの姿にされた。周りをぐるっと先輩の僧侶や見習い僧侶が囲む。「合格」と言われた。でもって、襲われそうになった。大暴れしてぶちのめした。
「未遂だからな!」
第七皇女の瑞華様のときは未遂で終わらなかったけどね。あれは縄解かれたんだから、合意なのかな。
派手に暴れたことが住職の耳に入って気に入られ、用心棒としてこの屋敷に異動となった。
「よく、入ってすぐの男、採用したよね。住職」
「オレも思った。ひたすら先輩にひれ伏してっから」
「用心棒、いっぱいいます?」
「4人。この屋敷のボス、細マッチョ、ゴリマッチョ、で、オレ」
「4人ですね」
「じゃ、オレ、部屋行く。麗、気をつけろ。4人の中に殺し屋がいる」
ひぇ〜。
「なんで分かんの?」
「耳が落ちてた。じゃな」
御者は去った。
ん? 耳? ええ。それって落ちてるもんだっけ。なんで耳。本体はどこ。怖いよー。
そーだ。帰ろ。
今だったら、みんな寝てるんだよね?
部屋の出入り口だと、殺し屋に出くわすかもだから、窓から。窓は2箇所。
1つ目オープン。臭っ。なんだろ。めっちゃ臭う。閉めよ。吐きそ。
2つ目オープン。見えたのは松の木。
2つ目の窓から出ようとすると、足音が2人分聞こえた。急いで窓をそっと閉じた。
「掘り方が浅かったのよ」
「掘り返すんっすか?」
「とっとと埋め直しちゃいなさい」
「こんなの、新人にやらせましょうよ」
「まだよ。どんな子か分かんないじゃない」
「カタギじゃねーっすよ。怪我人だらけで、寺じゃ、掃除するヤツもいねーって話っすよ」
「す・て・き。うふっ」
「もう、掘り返したら河へ捨てちまいましょー」
「ダメよ。見られるリスクがあるじゃない。それに、浮かんできちゃうの」
「こんなじゃ、錘もつけらんねー」
「東の国の刀、ヤバいわ」
「切れ味良すぎッス」
「いーんじゃない? 気づく間もなくイって幸せよ」
何してんだろ?




