金満寺商業船所有
ほどなく、都の河港の使用記録が手に入った。
李氏様は使用記録を「兄に持ってきてもらった」と。燈実パパじゃん。
「河で軍事訓練をなさってるんですか?」
「そーなんだ。兄はアクが強いから、何か持ってきたところで誰も気にしない」
どんな理由? 祖心大意(大雑把)で押しが強いんだろーなってのは、なんとなく想像がつく。
記録を見ていく。「日付 河港使用許可証番号 船の所有者 港の使用料」。
さすが都の港だけあって、多くの船が利用してる。時刻も書いて欲しかったなー。
キラと兄と私が都に帰ってきた日の記録を、最後から見ていく。あのとき、もう夜だったから。
水運屋、水運屋、水運屋……。
陳氏絡みの物資の運搬だから、水運屋だろうと思いながら指で辿る。
水運屋の船、多っ。じゃ、水運屋ってことかなー。
ふと空欄が目に入る。! これだ。金満寺。
使用料の部分が空欄。ホントに船、持ってたんだ。寺なのに商業船持ってるって、どゆこと。名義貸し?
ここで1つ道が閉ざされた。東の国へのお土産横領を白日の元に晒す道。
自分としては、金満寺は船がないのに、架空の船を仕立て、その船で陶磁器&芸術品を運んだことにして、自分のものにしたと思ってた。だから、金獅子香炉の中に未使用っぽい華港使用許可証があったんだって。この場合、船が存在しないことを示せば横領を暴ける。
でもさ、金満寺の船がホントにあった。
仮に名義貸しだとしても、船が実在するとしないとではえらい違い。
甘かった。
密輸で儲けた銀を運んだ船は、金満寺の船。ってことは、陳氏と繋がってる水運屋って、ビジネスだけの関係? ブラックそうなんだけどなー。賄賂はあるだろーなー。賄賂、違法じゃないし。
外出。前回と同じく夕方に李氏様の屋敷を馬で出た。
向かうのは都の河港。正規の方。
銀を運んだだろう帆船は金満寺のものだった。
キラと兄と一緒だったあの夜、帆船は、大河の支流に入って積荷の箱を小船に積み替えた。その後、帆船は大河に戻った。箱の何個かを下ろして、残りは都の河港へ運んだんじゃないかな。
「麗、こんなとこで何してんの?」
会っちゃった♡
馬に乗ったまま、河港を見渡していたとき、ひょっこり雲嵐。
「雲嵐こそ」
「オレは酒買ってきたの」
雲嵐の乗る馬には、荷物がぶら下がってる。酒。
「飲むんだ?」
「兄貴のパシリ。麗は?」
「船見に来たの」
「船? 麗が乗ってた船?」
「ううん。華港へ行ったときに見た船」
「へー。よく分かるな」
「?」
「オレ、どれも同じに見える」
「そ?」
大小様々でも、造りは似てるから、大きさが同じなら見分けにくいよね。
「どれ? その船」
「今日はいない。この間いたの」
「へー」
あのときの帆船は、すぐに見分けられる。新しかったから。
どの船も船体の木は濃い焦茶色。河の水や風雨で貫禄ある風貌になってる。そんな中、場所によっては木目が見えるほどの若木は目立つ。だから、すぐ分かった。
「……雲嵐、ありがと」
「へ?」
あの帆船は新しかった。2年前にはなかったかもしれない。
もし、2年前、金満寺が船を持っていなかったら、船が出ていないことの証明になる。他の船がなければ。
「Cって印の蔵、いっぱいあるね」
穀物が眠ってるんだろーなー。
「陳氏様んとこの蔵。ほら、蔵の向こうに木がもこっとしてるとこあるじゃん? あそこが家」
港からめっちゃ近い。積荷を簡単に運べる。
「でっかそう」
「でかいよ。陳氏様の先祖は、大河から攻めてきた敵を食い止めたんだよ。それで、ここら一帯の土地をもらったんだ。平和んなったから港を整備したんだって。商売で使う港は使用料とか色々いるけどさ、陳氏様の力で、漁師の港はそんなんナシ。みんな感謝してる」
そっか、雲嵐ってジモティじゃん。




