諸行無常盛者必衰
元経済の副大臣、金満寺の住職は、出家してから宮中を訪れていなかった。つまり、税として納められた金獅子香炉を見たのはおかしいってことになる。小さな証拠を1つゲット。
ぬるい。
阿鼻叫喚後に植民地化なんて惨劇。平和と安寧のために、もっと激しくざくざくと進みたい。
北の国への賠償金額がちょろまかされてた件については、証拠が弱い。領収証、書いてくれればいいのに。
東の国へのお土産が横領されていた件については、華港使用許可証の六零五、六零八が使われていないというところまで。あとは推測。金獅子香炉が横領品って鼻クソみたいな小さな証拠だけ。
例え事実が明るみになったところで、生糸&絹織物、陶磁器&芸術品ということで、即国庫金として押収し、戦費にすることは難しい。
北部への穀物の横領に関しては全く証拠なし。
第七皇女の瑞華様から文が届いた。北の国へ嫁ぐことを決めたと書かれていた。
決めた理由は、何年も前に嫁いだ現国王の母からの文だった。
北の国の国母は、央の国現皇帝の異母姉。央の国の皇室から北の国に嫁いだ人。
瑞華様は北の国のことを知るために、北の国の国母と文を交わしていたのだった。
文の中に、賠償金について触れられているかもしれない。
すぐさま祝辞を文に書き、北の国の賠償金がいくら支払われたか尋ねてみた。即返信。銀600。やっぱり。
「李氏様」
私は瑞華様に、賠償金横領という事情を伝えた。そして、瑞華様の了承を得てから、李氏様に瑞華様からの文を見せた。
李氏様は法の大臣と相談し、即、外交の副大臣を逮捕。
決め手は、北の国の国母からの手紙だった。
さすがの官僚トップ陣も後宮への手紙まではノーチェック。
取り調べが行われた。副大臣は、全て自分がやった言った。横領した銀と同じ金額が、副大臣の家から没収された。
黒幕には辿り着けなかった。
すぐさま各部門が国庫金を狙う。土木部門、経済部門、軍事部門、法部門。
流石に外交部門は臨時予算案を提出しなかった。法部門はパフォーマンスのみ。決定権は実質、経済部門にある。
なぜか燈実パパが会議に乗り込み、多くをもぎ取った。
大砲発注。
「副大臣が全ての罪を負ったのが不思議です」
誰の差し金かゲロっちゃえばよかったのに。
「そんなことをしたら、家族が殺される。そこら中にいる間者が、告白した瞬間に副大臣を殺しただろうし、すぐ後、家族を殺しに行く。結局、指示を出した人間は捕まらない」
「徹底してますね」
「ああ。副大臣は、罪を認めたから自分も家族も命はあるし、家も存続させられる。名誉は失ったが」
「名誉ですか」
平民の私だって下の下の下だったことを後悔してる。貴族にとって名誉は大切なんだろう。
「外交の大臣は、今や誰も話をしたがらないそうだ」
「副大臣が横領で捕まったからですか?」
「秘書が和平条約を書き換えて自害した件もある」
「そうでしたね」
「仲間を売る男という目で見られている」
箱の数でバレてしまった横領。終わってみれば呆気なかった。
箱、数。箱。数。
頭の中に、箱の重みで沈む小船が浮かんだ。
東の国に船を出したら大儲けをするはず。
私を都まで運んでくれた怪しい船ですら、年間だったら銀80箱ぐらいの商いになると思う。前に見た、華港への積荷リストから考えても、それくらいだろう。
東の国へ行く船は、もっと儲けられるはず。
ダミ声男は「銅銭が央の国の7倍の銀になる」と言った。
怪しい船の7倍の商いと見積もって、
80×7で560箱
半分品物を買うのに銀を遣ったとしても、
560÷2=280箱
狭い水路を進む小船が積めるのは、多く見積もって1艘30箱程度。小船は3艘。
30×3=90箱
90箱<280箱
華港から来た帆船が小船に移し替えた箱は全部じゃない。他にも箱があったはず。
考えてもどうにもならない。
李氏様の了解を得て、雲嵐に会いに行った。夕闇に紛れて。馬を使った。
山の中、荷馬車を見つけた。懐かしさすら感じる。
馬から降りて荷馬車の中に入る。荷物はすっかり片付けられて空っぽ。
ころりん
横になってみた。楽しかったな。雲嵐が世界の全てだった日々。




