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『デッド・アディクション 〜依存者たちの最期(ラスト)禁断症状〜』  作者: 天野確率
第2章『相互干渉と偽りの協調』

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第15話:『地獄の席替え(強制シャッフル)』

『3……2…1……移動を開始します』


アナウンスが終わると同時に床の金属プレートがガコンと重い音を立ててスライドし始めた。椅子とデスクが丸ごとレールに沿って移動し、部屋の配置が目まぐるしく入れ替わっていく。


「きゃあぁぁっ!?」


詩織が悲鳴を上げ吉野は必死に椅子の肘掛けにしがみつく。


ガタコン!


短い旋回と移動を経て、床のロックシステムが重厚な金属音とともに固定された。


翔太が慌てて周囲を見渡す。自分のデスクにあった「スマホ」は遠く離れた部屋の反対側、荒井の目の前に移動していた。そして——翔太の目の前に鎮座していたのは吉野の依存対象である「なみなみと注がれた高級ウイスキーのボトルとグラス」だった。


(俺の目の前に吉野の酒……! 逆に荒井の前には……俺のスマホ!?)


「あ……あぁ……俺の酒が……!」


吉野が情けない声を上げる。彼が移動させられた先はさきほど大滝が死亡して空席となった場所——そこには当然、何も置かれていなかった。大滝のパチンコ台は彼の死体とともにすでに撤去されている。しかし吉野にとっては目の前に自分のウイスキーがないこと自体が新たな恐怖だった。禁断症状に苛まれる彼の視線は、部屋の反対側——翔太の目の前に移動した己の酒瓶に釘付けになっている。


(吉野は自分の酒が目の前から消えたことで逆にパニックを起こすかもしれない……!)


そして、最も危険な配置を引き当てたのは詩織だった。


彼女の目の前に移動してきたのは、荒井が狂乱していた「巨大な酒瓶のラック」ではなく、白木のデスクに置かれていた「さまざまな形状のカッターナイフと鋭利なカミソリの刃が整然と並べられたトレイ」だった。


「ひ……っ! 嫌……触りたくない……!」


詩織は白木の依存品(自傷器具)を目にし顔面を蒼白にして身を引く。


「へぇ……面白いね」


白木は自分の前にやってきた「詩織のスマホ——通知が鳴り止まない液晶画面」を冷ややかな目で見下ろしながら不気味に目を細めた。


「ねえ詩織ちゃん。君のスマホさっきから『いいね』やコメントの通知が止まらないよ? 画面をタップすれば全部見られるのに」


「や、やめて……! 触らないで……!」


詩織が震える声で叫ぶ。


他人の依存対象に触れれば即死。しかし目の前で自分の依存品を他人に弄ばれる精神的拷問は、禁断症状を加速させるには十分すぎる毒だった。


一方翔太の視線は部屋の端へ向けられていた。


「酒ぇええっ!? なんで俺の酒がねぇんだぁぁあっ!?」

荒井が自分の目の前にある翔太のスマホを睨みつけ泡を吹いて発狂している。アルコールを欲して暴走する巨体が、目の前にある「意味不明な機械スマホ」に向かって太い腕を振り上げた。


(まずい……! 荒井の奴、理解できずに俺のスマホを殴り潰す気だ!)


他人の依存対象を「破壊」した場合のルーールはまだ明かされていない。もし破壊もペナルティ対象、あるいは自分の依存品が破壊された時点で失格になるとしたら——。


「荒井! それに触るなッ!!」


翔太の叫びが殺伐とした室内に空しく響き渡った。


残り時間26分10秒。

次のシャッフルまで、あと2分40秒。

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