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博士転生〈戦国時代にユートピアをつくる〉  作者: ビアンコ
魔王降臨編

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第五十五話 魔王構想

 誠は、焔の件で皆を集めて会議を開いていた。


「菫の報告によると、昨夜、焔が上杉の上田衆を急襲して大量虐殺をしたらしい。対策が必要になるので、皆の意見を聞かせてもらえないだろうか?」


 まずは、知恵者の主水が手を上げた。


「そうなると、偽装して上杉を滅ぼすという誠さんの作戦も意味を成さなくなりましたね。上杉もここまでされたら、手段を選ばずに焔とその関係者を抹殺しようとするでしょうから」


「皆さん、お兄が迷惑かけてゴメンなさい!」


「灯里ちゃんのせいじゃないから、そんなに気に病まないで。大切なのはこれからどう行動するかだよ」


「誠さんの言うとおりですね。それで、誠さんは何か策はあるんですか? 残念ながら私には何もアイデアが思いつきません。ここまで話が大きくなってしまっては……」


「1つだけ、アイデアがあります。焔とその関係者を討伐したことにするんです」


「へ? 誠、私にも分かるように話してくれよ!」


「椿、それはね、僕たちで焔達の死を偽装するんだよ。例えば、魔王辺りせいにしてね」


「なるほど、今度は神じゃなくて、魔王を騙るってことか。面白そうじゃん!」


「それで少し窮屈だけど、焔達には別人に化けてもらって、その後の人生を送ってもらうのが最も無難だと思うんだけど。どうかな?」


「それでいいと思いますよ。ところで誠さん、その場合、上杉は予定どおり滅ぼすんですか?」


「主水さん、上杉は滅ぼすしかないと思います。これだけ上杉から恨みを買って、さらにメンツを潰してしまったわけですから、焔関係者を含めた残党狩りは必ず行われるはずです」


「その関係者に、我々も入る可能性が高いと誠さんは考えているわけですね」


「はい、今はまだ僕らと焔の関係は上杉にバレてませんが、それがいつまでも続く保証はありませんからね。全国指名手配されてからでは、手の打ちようがありませんから」


「なるほど、わかりました。で、上杉討伐も魔王のせいにするんですよね?」


「はい、この際、魔王にすべての罪を被ってもらいます」


 ここで、焔の妹である灯里が手を上げた。


「誠さん、そのためにはお兄を捕まえないと駄目なんだよね?」


「灯里ちゃん、そのとおりなんだよ。焔を捕まえるのが一番大変だと思う」


「誠〜、そこは私に任せてもらえるかな〜?」


「菫、頼むよ。今回は葵と一緒に捜索にいってもらえるかい? 椿にはやってもらいたい仕事があるんだ」


「了解〜」


「誠、安心して私に任せるといい」


 最近、出番の少なかった葵は張り切っているようだ。


「それで、誠、私にやってもらいたいことって何だよ?」


「椿、え〜とね、里に帰ったら魔王を作ろうと思っているんだ。そのサイズはかなり大きくてね、且つ人が乗れるようにしたいんだよ。その設計の相談を今からしておこうと思ってさ」


 設計と聞いて、興味をもったアリスも会話に参加してきた。


「じゃあ、私もその打ち合わせに参加してもいい?」


「もちろん、そうしてもらえると助かるかな。最終的なデザインは菫に作ってもらう予定だけど、基本的な強度計算なんかは今のうちに済ませたいと思ってるんだ」


「わかったわ、計算は得意だから任せて!」


 設計の話も落ち着いたところで、誠はもう一つの課題について話すことにした。


「灯里ちゃんは僕と異能の訓練をしてほしいのだけど、体調は大丈夫?」


「誠さん、身体の方は完全に治ったから問題ないよ。で、私は何をすればいいの?」


「魔王の必殺技を開発しようと思って。灯里ちゃんには悪いけど、この里は魔王の仕業に見せかけて消滅させようと思ってるんだ。その時に使うインパクトのある技の開発って言えばわかるかな?」


「え? この里を消滅?」


「うん、手始めにこの里を生存者ゼロに見えるくらいの威力で破壊するつもり。そうすれば、焔の里にいた人達は全員死んだと上杉に思い込ませることができるだろ?」


「そういうことなら仕方ないね」


「うん、ちょうど近くに上田衆もいるから、彼らのの目の前でそれをすれば上杉景勝に報告しやすいと思ってさ」


「わかったよ、誠さん。それで、その時に使う魔王っぽい必殺技を開発しようって魂胆なのね」


「話が早くて助かるよ」


「そして、お兄を捕まえたら、一芝居打つってことね」


「そういうこと。後は、この際、灯里ちゃんにも空を飛べるようになってもらおうと思っているんだ」


「それも頑張ってみるよ、誠さん」


「そういうことで、皆、問題ないかな」


 会議に参加しているメンバーは全員、誠の方針に頷いたのだった。




 一方で、灯里にはテレパシーによる焔への呼びかけを、失踪以来ずっと続けてもらっているが一向に応答はなかった。


「しかし、灯里ちゃんからの呼びかけに応じないなんて、焔も困ったものだね」


「お兄は、ああ見えて繊細な性格だから思い詰めているんだと思う」


「そうかもしれないね……。ところで、ホバリングを使った移動には慣れたかい?」


「うん、誠さんの他のお嫁さんみたいに出来るようにはなったよ」


 今、誠と灯里は異能の特訓をしていた。灯里は飲み込みが速いこともあって、誠がコツを教えると直ぐに真似することができた。


「じゃあ、次は空を飛ぶ練習だね。今は、地面から10cmくらいの高さをホバリングしているけど、それを少しずつ高くしていく感じで練習してみてもらえるかな」



 その数日後、灯里は空を自由に飛べるようになっていた。


「誠さん、空を飛べるって気持ちいいね! でも高い所まで上がると寒くなるのは勘弁してほしいかな」


「ああ、それは異能で防壁を作って、防壁内の温度を調節すると快適になるよ」


「え? そうだったんだ。でも、私にもできるかな?」


「嫁達は、僕と同じ異能が使えるみたいだから、灯里ちゃんにも多分できると思う」


「そうなんだ、頑張ってみる」


「それに防壁が作れるようになると、戦闘の時、より安全に戦えるようになるから是非できるようになってほしいかな」


「わかったよ、誠さん」



 さらに数日後、誠と灯里は日本海上空に来ていた。その頃には嫁達が使っている異能の技は一通り灯里も使えるようになっていた。


「じゃあ、今日から本番だね。魔王の必殺技を開発しよう。灯里ちゃんが嫁になってから、僕も炎を出せるようになったからね。一緒に同じ技が使えるように特訓しよう!」


「どんな技がいいの?」


「上杉軍が一瞬で戦意を失うような派手な技が理想かな」


「例えば?」


「いくつかイメージがあるけど、例えば、炎で弓矢を作って一本射つだけで、一瞬で街を丸ごと焼き尽くせるくらいの高火力なパターンとか……」


「ほかには?」


「後は、一本射つと、それが無数の矢の分裂して大勢の敵兵を同時に焼き尽くせるようなものとか……」


「うわぁ……」


 灯里は誠の妄想たくましい技の内容に若干引いているようだった。それでも誠は負けじと続けた。


「最初の高威力のパターンは、岩石を溶かすくらいの高温にできると、上杉軍もビビると思うんだよな」


「そうなんだ……」


「まあ、とりあえず、海に向かって討てば山火事の心配もないし、練習してみようよ」


 2人は海に向かって炎の矢を射るうちに、どんどんと上達していった。


 実は、誠には焔救済のためのもう一つのプランがあった。だが、その案も実現にはネックとなるポイントが1つあって、成功率は決して高いと言えなかった。そのため、まことは最初の無難な方の案を皆に伝えていたのだった。




 そうこうするうちに、菫から上杉の樺沢城が焔によって焼き落とされたとの通信が入った。誠達は早速、上空から様子を見に行ったが、樺沢城は跡形も無くなっていた。


「おい、誠、あそこに城が有ったって本当なのか?」


 椿が疑問に思うのも無理はなかった。城の主な建材である木材は完全に炭化した上で消し飛んでおり、土塁も爆風で吹き飛ばれていた。上空から見た樺沢城は綺麗な更地になっていたのだ。


「お兄は、たった1人でこれを……」


 葵は、呆然としている灯里に寄り添って元気づけようとした。


「灯里の兄は、私達で必ず助けるから心配するな」


 菫も調査の結果を伝えて灯里を励ました。


「灯里ちゃん、それにこの城にはほとんど人はいなかったみたいだよ〜。この城の人達と上田衆はもう一つ先の坂戸城に移動した後だったから、犠牲者はほとんど出なかったんだよ。だから、そんなに気に病むことないよ〜」


「皆さん、気を使ってくれてありがとうございます……」




 一方、その頃、焔は根城にしている山中の廃屋で自責の念に苦しんでいた。


「城1つ分の命を奪ってしまった。こんな罪深い人間が生きていてもいいのだろうか……」


 焔は楓が亡くなってからというもの精神的に参ってしまい、ほとんど眠れなくなっていた。さらに追い討ちをかけるように、焔は今回の城攻めでは能力を使いすぎてしまった。そのため、今ではもう火球すら撃てないくらいに彼は弱体化していた。


 そんな弱りきった焔をかろうじて突き動かしていたのは、楓の復讐という狂気にも似た執念に他ならなかった。


「だが、楓の敵《かたき》である上杉景勝を討つまでは、なんとか身体を保たせなければ……」


 焔の病的に落ち窪んだ眼窩には怪しげな光が灯っていた。


『お兄! お兄! お願いだから返事して――!』


 彼の脳裏には妹からの呼びかけが、ただ虚しく響いていた。

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