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博士転生〈戦国時代にユートピアをつくる〉  作者: ビアンコ
豊穣の女神編

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第三十二話 殲滅戦

=== 敵本陣にて ===


 暗殺部隊の隊長、影山主水かげやまもんどは伝令から戦況報告を受けていた。


鷲尾わしお殿、我々の暗殺部隊は撫子の暗殺に失敗して、壊滅したそうです。そして、傭兵部隊の前線もたった一人の敵に戦況を覆されて崩壊したみたいですよ」


 影山は部隊が全滅したと聞いてもまったく気にする風でもなく、世間話をするかのように隣にいる傭兵部隊隊長の鷲尾豪三わしおごうぞうに語りかけていた。


「へ〜、敵にも歯ごたえのある奴がいるんだ。それで、どうするんだい? 影山さんは」


「こういう一騎当千の個人に対しては、正面から相手をするのは賢くありませんからね。罠を張って搦手で体力を削るのが良いと思いますよ」


「そういう嫌らしい作戦を立てさせたら、アンタの右に出る者はいないだろうな」


「そんなに褒めても何もでませんよ。敵は恐らく本陣を目指して単身乗り込んでくるでしょうから、時間的余裕はあまりありませんね。まあ、大した罠は張れませんが、任せて下さいよ」


「ああ、アンタに任せるよ。奴を罠に誘導するのに俺の部下を使ってくれて構わないよ」


「それは助かります。私の部下はあと二人しか残ってませんから」


「それでも突破してきたら、俺とアンタで直接相手をしようぜ。アンタも武人としては俺の相手をできるくらいには強いんだろ?」


「まあ、伊達に隊長をしておりませんからね。でも私は後方で部隊の指揮をしている方が性に合っていると思ってますよ」


 それから、影山は部下に命じて、本陣近くに誠用の罠を手早く設置させた。





===


 誠は敵の前線が後退して行くのに合わせてテレポートで進撃していった。敵は誠の指弾で仲間が撃たれると直ぐに後退して前線を下げた。


「まるで僕を誘導しているような動きだな。椿を囲んでいた奴らも嫌らしいフォーメーションを組んでいたし、用心した方がいいかもしれないな」


 敵は誠に接近戦を挑んでも、一方的に殺されるだけだと分かってからは距離をおいて、弓矢を射ってくるような戦法に変えたようだった。


「どうせ、椿の時のように矢に毒でも塗ってるんだろ」


 誠はそう言いながら、『時空間支配』で敵兵をロックオンすると、指弾を曲射させて、敵兵が盾代わりにしている樹木を躱しながら貫いていった。


 すると、突然、誠の目の前に煙玉が投げ込まれ、周りが煙幕に包まれた。誠は、元より力場で防御を固めているので奇襲されても困ることはなかった。


「『時空間支配』でスキャンして敵の動きくらいは把握しておくか……」


 誠は敵の位置をスキャンすると、敵の小集団が接近してくるのがわかった。


「今度は何をしてくるつもりだ。何をしても無駄だっていう絶望をお前達に味あわせてやるよ」


 誠は独り言を呟きながら相手の出方を待たずに、構わず前進していった。





 8名からなる敵の小隊は盾役2名を前にして、煙幕の中を誠に向かって接近していた。


「おい、あんなバケモノ相手にこんなに近づいて大丈夫なのか?」


「分厚い盾もあるし、煙幕で相手には見えていないから心配するな。この作戦の目的は、あいつに物理攻撃が通用するか確かめることだ。結果が分かり次第、退却するからそのつもりでいろ」


「そろそろだな。網を投げろ!」


 盾兵の後ろにいた兵士が誠に向かって網を投げた。網は上手く誠の頭上にかかった。


「槍兵、奴に毒槍を食らわせろ!」


 2名の槍兵が突撃し、誠に毒槍を突き立てた。


「おい! 槍が刺さらないぞ!」


 その時、煙幕の中から何かが高速で飛んできて槍兵の体を貫いた。


「くそ、撤退する」


 もう一人の槍兵が背を向けて退却しようとした時、頭を後ろから何かに貫かれて絶命した。


 

「槍兵が帰って来ない。殺られたか……よし、銃兵、前に出ろ、奴に種子島を食らわせてやれ!」


 2名の種子島を構えた兵が盾兵の前に出ると、誠のいる辺りに向けて発砲した。2回の轟音を響かせたのち、指揮官は撤退を命じた。


「目的は達した。撤退するぞ。煙幕が晴れたら味方が結果を確認してくれる手筈になっている」


 全員が背を向けて撤退を開始した時、煙幕の中から何かが連続で飛んできた。


 一番後方にいた盾兵が盾ごと腹部を貫かれて倒れた。


「おい、一人殺られたぞ!」


「構うな。散開して逃走しろ!」


 小隊の兵士は全滅を避けるためにバラバラになって全力疾走した。走り始めて間もなく、仲間たちが倒れる音がドサッドサッと聞こえてきた。


「何故、煙幕の中で飛び道具が命中するんだ!? こんなんじゃ全滅す……」


 そして、兵士は自分の胸を何かが貫いた後、致命傷を負ったことに気付き、地面に崩れ落ちた。





 「やれやれ、こんなんで僕から逃げられると思っているのか?」


 誠は『時空間支配』を発動して、逃走する小隊の座標を脳内にマッピングしてロックオンした。その後、ロックオンした標的に向けて指弾を放っていっただけだった。


「一人残らず掃討しないと、また増援を呼ばれたら面倒だしな……」


 やがて煙幕が晴れると、無傷の誠が本陣に向かっているのを敵兵が遠くから視認した。その敵兵は慌てて本陣に向けて戦況報告に走った。





 伝令の報告を受けて、影山と鷲尾は談笑していた。


「鷲尾殿、どうやら敵には通常兵器による物理攻撃は効かないみたいですね」


「影山さん、それじゃあ、いよいよ俺達の出番ってわけか?」


「まあ、慌てないでください。本陣前にもう一つ罠を仕掛けてますし、こちらにも強い兵士はいますから、それをぶつけてみますよ」


「そんな面倒なことをする必要はあるのか?」


「依頼主の東雲家へ正確な報告ができますので。もし、我々が敗退したとしても、依頼主が次の一手をどうするかの判断材料にはなるでしょう?」


「相変わらず気遣いが細かいなぁ」


「ビジネスですからね。依頼主を満足させることができれば、次も仕事をもらえますから」


「次は、猛者をぶつけるのか?」


「いいえ、最初に罠にかけます。物理攻撃は効きませんでしたので、今度は毒を試してみます。敵も呼吸はしているでしょうから、毒入りの煙幕にハメます」


「また、嫌らしい罠だな。煙幕を吸い込んだら詰みってやつか?」


「はい、正解です。トリカブトですので、相手が生き物なら必ず効くはずです。ですので、結果が楽しみですよ。鷲尾殿には効かないかもしれませんけどね」


「影山さん、人を化物扱いしない頂きたいな。俺だって毒を盛られれば、ちょっとは効きますよ!」


「ははは、ちょっとですか……」


「そういうアンタも毒は効かないんだろ?」


「まあ、私は生まれつき毒が効きにくい体質ですし、幼少の頃から少しずつ毒を飲まされて耐性をつけてきたので、大抵の毒は効かない体になってしまいましたがね」


「アンタも十分バケモノだよ」





 誠は時空間支配で敵を発見次第、指弾で掃討しながら敵本陣に向けて進んでいた。50mほど先に首領らしき二人の男が河原の大岩に腰掛けて談笑している姿が見えた。


「あそこが本陣か。この辺は河原が狭くなっているし、両脇の急斜面も直ぐ横まで迫っているから、地形的にも何か仕掛けてきそうだな」


 そう独り言を呟いていると両脇の急斜面の木々の中から誠の頭上に網が投げ込まれた。


「また、網かよ!」


 誠に網がかぶさると同時に、左右の木々の間から複数の投擲物が投げ込まれた。投擲物からは煙が出始めた。


「さっきと、同じか?」


 さらに投擲物が誠に直接ぶつけられ、破裂して粉状のものが周囲に散布された。それが執拗に繰り返された。


「やけに念入りにぶつけてくるな。毒か?」


 誠は以前、椿と戦闘になった時に煙幕を吸い込まないような力場を形成することを覚えていたので、今回も周りの煙を吸い込むことはなかった。


「煙幕を以前、目鼻の粘膜や肺に吸い込んで酷い目に遭ったことがあるから、対策済みなんだよ」


 そう呟くと、周囲を時空間支配スキルでスキャンして、一人ずつ指弾で撃ち殺していった。





「あいつ、毒霧が効いてないぞ! 本物のバケモノかよ……」


 敵本陣では、煙幕の中から歩いて出てきた誠を見て鷲尾豪三が感心していた。


「彼も我々のお仲間って事ですね」


 横では影山主水も同意した。


「次は武術が通じるかどうかですね。まあ、物理攻撃が通用しないとのことですので、これは期待薄ですけど」





 敵本陣の前に進み出た誠の前に、3名の猛者が立ちふさがった。一人は槍を手にしており、残り二人は刀を抜いたフル武装の鎧武者だった。


「オジサン達、抵抗しないのなら楽に殺してあげるけど、どうしますか?」


「坊主、悪いがオジサン達も仕事なんでな。そっちこそ、なるべく楽に殺してやるから、じっとしてな」


 そういうと槍で武装した猛者は誠に槍を一直線に突いてきた。力場で防御しているせいで槍が誠に触れることはなかったが、重い突きだったため、誠は力場ごと数メートル突き飛ばされ、地面に叩きつけられた。


 誠が起き上がると、間髪入れずに槍の突きが連続で繰り出された。同時に背後から大太刀を持った武者が誠を力場ごと両断する勢いで横薙ぎに斬撃を浴びせてきた。


「今度は武人相手かよ」


 前後から重い連続突きと斬撃を浴びせられ、その衝撃は誠の肉体にも届いていた。


 さらに側面から刀による鋭い突きが力場を突き破る勢いで誠に突き刺さった。


「これは、奥の手を隠している場合ではないな」


 誠は『時空間支配』を発動して、槍術使いの背後に転移した。そのまま槍使いの背中に触れて、異能を使い、敵の全身の血液を沸騰させた。


 すぐさま、大太刀使いの背後に転移し、心臓を指弾で貫通して殺害。


 さらに、二人の猛者が瞬殺されて呆然としている剣術使いの頭を、その場から指弾で撃ち抜き絶命させた。


「もう、面倒だ」


 誠はそう呟くと、時空間支配スキルを再度発動して残った敵をすべてロックオンし、指弾を連射していった。


 指弾が通用しなかった鷲尾豪三と影山主水、影山が忍刀で払って庇った1名の忍び以外の敵は、誠の攻撃によってものの数秒で殲滅されてしまった。

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