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博士転生〈戦国時代にユートピアをつくる〉  作者: ビアンコ
隠れ里編

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第二十二話 瑞波の決断

 誠が長助ちょうすけによる造反事件を制圧した後、甚兵衛じんべえ弥平次やへいじが澪からの知らせを受けて駆けつけたときには、瑞波みずはが生き残った海賊達のうち長助を除く全員の命を絶った後であった。


 甚兵衛と弥平次、他の残された一族の者たちは、造反組の亡骸を山中に運び、火葬した旨を誠に報告した。


 長助に関しては、瑞波一族の名誉を汚した罪で一族による制裁が加えられることとなった。


 瑞波が里専属の医師である宗一郎に使いを送り、長助が澪を攫ったことを伝え、一族を代表して謝罪した。そして、制裁の内容は誠が口にしていた生きたまま解剖して医学の発展に死をもって貢献させることだと伝えた。


「澪を攫ったんじゃ、俺に解剖されても文句は言えねぇな」


 万遍の笑みで宗一郎にそう宣告されると、猿轡をされた長助は涙を流しながら首を横に振り続けた。


 長助の解剖は森の中で瑞波一族が見守るなか、人知れず行われた。


「宗一郎様、長助の解剖はどの程度までする予定ですか?」


「いい質問だ、瑞波。生きた人間を解剖するなんて初めての経験だからな、完全にバラバラになるまで徹底的にやるつもりだ。勿論、血管は傷つけずなるべく生きた状態のままバラしていくぞ」


「宗一郎様、その辺はお任せ致します。ただ一つお願いがございまして、長助は私達にとっても大罪人です。ですので、今後二度とこのようなことが起こらないためにも、見せしめとして解剖の一部始終を一族のものに見せたいのですが、構わないでしょうか?」


「なるほど、見物人がいるってわけか、腕が鳴るぜ! もちろん見学は構わないよ。人体の仕組みを見る機会なんて滅多にないからな。見せしめなんて言わないで、勉強するつもりで見学していってくれ」


「ご配慮、感謝致します」


「そうか、せっかくの機会だし、アリスの奴もきっと興味があるだろうから見学させたいんだが、いいかい?」


「あ、あの、アリス様はまだ13歳だと聞いています。そんな年端も行かない娘に見せても良いものなのでしょうか?」


「アリスは13歳といっても、そこらの娘とは頭の出来が違うからな。解体はそれまで待ってやるから、だれか人を寄越してアリスに聞いてみてくれないか? それで、もしあいつが見たいと言ったら、連れてくればいい」


「承知しました」


 しばらくすると、瑞波の使いの者がアリスを連れてきた。


「やっぱり来たか、アリス」


「うん、人体の仕組みは、誠からある程度は習って知っているし、宗一郎よりも知識だけなら詳しいと思うわ。でも実験に勝るものはないから是非見学させてほしい」


「俺より詳しいとは言ってくれるね。でも、これでアリスもマッドサイエンティストの仲間入りだな!」


「宗一郎、人聞きの悪いことは言わないでほしいわ。私は純粋に科学を追求したいだけなの!」


「まあ、せっかく来たんだ、アリスにも助手をしてもらうぜ。折角だからサンプルも採取して持って帰って研究するつもりだから、アリスにも臓器の組織がどうなっているか顕微鏡で見せてやるよ」


「ぜひ、見せてほしいわ!」


「やっぱり、マッドサイエンティストじゃねぇか」


「……」


「じゃあ、そろそろ、おっ始めるとするか!」


 この後は、二人のマッドサイエンティストによって、長助は生きたまま文字通りバラバラにされていった。


 嬉々として人間の解体ショーを行っている二人を見て、瑞波一行はドン引きしていた。


 科学はいつの世も一般の人々には理解の及ばないものなのだろう。




 この長助の解体ショーはあまりに凄惨を極めたため、瑞波からは誠には報告されなかった。誠が知ったのはかなり後に宗一郎から聞かされた時のことだった。


「え! 冗談のつもりで言ったんだけど……本当に生きたまま解剖したんだ」


「まあ、澪に酷いことをしようとしたんだから仕方ないよな。ただ、残念だったのは手足の骨をお前がバラバラにしちまってたことだな。次、チャンスがあったら無傷の状態で解剖させてくれ。今回の解剖で課題もできたから椿に新しい手術道具も作ってもらう必要もあるしな」


「……」


「だけど生きた人間の臓腑を解剖したのは初めてだったから、いい勉強になったよ。ありがとうな、誠! アリスのやつも感激してたぜ!」


「い、いや、そういうつもりじゃなかったんですけど……これじゃ、僕がまるで鬼みたいじゃないですか……ってか、アリスにも見せたんですか!?」


「そうそう、アリスにも少し解剖をやらせてみたんだが、あいつ、手先も器用だし、才能あるよ!」


「宗一郎さん、ホント笑えない冗談はよしてくださいよ……」




===


 造反事件の後、瑞波は一族の者達をより一層引き締めるようになった。もう二度と自分の手で一族の命を奪うようなことはしたくないからだ。


 だが、残された一族も、目の前で宗一郎の手によって文字通り生きたままバラバラにされていく長助を目にしたのが相当なショックだったようで、反乱を起こす意志がある者は誰一人いなかった。


 また、今回の造反劇で、瑞波一行の人数も男衆が5人、女の側仕えが3人と、ほぼ半減したため、組織自体を見直す必要があった。


 それに加えて、誠の支配下に入ってからは、瑞波が代表で、他は都度、誠が役職を与えていたので、一族の序列が曖昧になっていたことも、今回の造反劇の原因であると反省したためだ。


 新体制は下記のとおりだ。


 一族の長はこれまでどおり瑞波(15歳)、


 瑞波の側仕え筆頭は女性最年長であり、薬草・医術の心得があり、負傷者や病人の手当てを担う早苗さなえ(33歳)、


 男衆筆頭は船大工筆頭でもある甚兵衛(60歳)、


 操船筆頭は最古参の操船手である弥平次やへいじ(55歳)ということになった。




===


 造反事件から数日後、瑞波、甚兵衛、弥平次の3人が誠の研究棟を訪ねてきた。


 3人から誠に改まって話があるとのことだ。誠は4人の嫁とともに話を聞くことにした。まずは、甚兵衛から話があるらしい。


「誠様、この度は長助が取り返しのつかない事件を起こしてしまい申し訳ございませんでした。今回の件で、儂らへの誠様の信頼は地に落ちてしまいました。どうか、儂の首一つで、一族の者を許してやってもらえないでしょうか」


 甚兵衛をはじめとして、瑞波と弥平次も土下座した。


「甚兵衛、今回の件は特別に許すと瑞波に伝えてあるから頭を上げてくれ。それにお前ほどの船大工を失っては瑞波が乗る商船が完成しないだろう。だから、申し訳ないと思っているのなら、仕事で結果を出してくれればいいよ」


「誠様、この老骨に慈悲を下さり、ありがとうございます。この甚兵衛、必ず御役に立ってみせます」


「甚兵衛、話はそれだけかい?」


「いえ、誠様、もう一つございます」


「もう一つとは?」


「どうか姫を5人目の嫁として貰って頂けないでしょうか?」


「は?」


「今残っている一族は姫に忠誠を誓うものばかりですので、もう長助のような大それたことを仕出かす者はいないと思います。ですが、姫が誠様の嫁になれば一族の忠誠心も誠様に自然と向かうようになり、皆も誠様に従うことに迷いが無くなると思うのです。つまり、これは儂ら一族のためでもあるのです」


「瑞波は承知しているのかい?」


「はい! 誠様、どうか私を誠様の5人目の嫁にしてください」


「誠様、姫は本気です。どうか姫を貰ってやってくれませんか。このとおりです」


「前にも話したとおり僕には未来の記憶があるんだけど、僕の知る未来では本人同士の同意があって夫婦になる人がほとんどなんだ。勿論、家同士で決めた夫婦もいるけど、いくら一族のためといっても、瑞波が好きでもない男に嫁入りするのはいくら僕でも申し訳ないよ。瑞波もまだ若いんだから、これから先、海運で商売した先で良い出会いだってあるかもしれないんだよ」


「実はあの事件の後、姫や一族のものとも話したのですが、お家再興のことを一番真剣に考えて下さっているのは誠様だということになりまして、それなら誠様に姫を貰ってもらうのが一番収まりがよいという話になりました」


「いやいやいや、お家再興なんて僕を巻き込まないで勝手にやってくださいよ。僕も邪魔しませんから」


「それに私は誠様のことをお慕いしております。この先、誠様以上の方はきっと現れません。どうか私を嫁にしてください」


「い、いつからなんですか?」


「誠様が、あの入江で大岩を砕いた時からです。その後も卯月を助けてくれた時や、山小屋の会議で私たちに道を示してくれた時や、先日、入江で造反者を粛清して私に一族の長としての自覚を持てと叱責してくれた時など、日に日に誠様への思いが強くなってまいりました。今後は商船の船長として、誠様の妻として恥じない働きをすると誓いますので、どうか私を嫁にしてください」


「あの皆さん、瑞波がこう言ってるんですが如何ですか?」


 誠は瑞波の本気に怖気づき、いつものように嫁達に判断を委ねた。


「私は誠が嫌でなければ貰うべきだと思う。今後、商船を使った事業は里にとって重要になる。その時に頼りになる瑞波は側に置いておくべきだと思う」


「私も貰うべきだと思う。瑞波はいい奴だぞ。造船や操船で此奴より頼れる奴はいないと思うぜ」


「私は誠の好きにしたらいいと思うよ〜。瑞波ちゃんは好きだから嫁になってくれたら嬉しいかな」


「私も貰うべきだと思います。今後、誠さんの商売に絶対役に立つ人材です。絶対、押さえておくべきです」


「え〜、妻たちの許可がでたのでOKです。瑞波、これからよろしくね」


「はい! 誠様、不束者ですが、末永くよろしくお願いいたします!」


 瑞波は里に来てから一番晴れやかに微笑んだ。

主要キャラクターと年齢

==================


惣兵衛(父) 38歳

志乃(母) 35歳

澪 18歳

誠 16歳

紬 14歳


葵(嫁1号:くノ一、忍びの里長の娘) 15歳

椿(嫁2号:くノ一、鍛冶師) 18歳

菫(嫁3号:くノ一、諜報・隠密・絵師)16歳

芹(嫁4号:くノ一、諜報・隠密・絵師)16歳

瑞波(嫁5号:海賊の姫) 15歳


エドワード(商人、銃の名手) 31歳

アリス(天才) 13歳


久世宗一郎(医師) 24歳


======


これで『隠れ里編』はお終いです。

次のエピソードから新章に入ります。

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