表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
博士転生〈戦国時代にユートピアをつくる〉  作者: ビアンコ
隠れ里編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
19/35

第十九話 戦艦建造計画

 誠の里では、兵装を搭載した商船の開発が新たな仲間を加えて始まろうとしていた。


 今日はその第一歩ということで、誠主催の開発会議が開かれた。この会議の目的は商船開発の方向性を開発メンバーに伝えることだ。


「では皆さん、会議を始めます。この会議では、これからどういう商船を作るのか皆さんに説明したいと思います」


 そう言って、誠は用意してあった商船のミニチュア模型を見せた。


「今回作る商船は、日本の平船ひらふねではなく、竜骨を骨格にしたタイプの船を建造します」


 誠は模型の外板を外して船の骨格を披露した。


「竜骨を船の背骨にする最大のメリットは、大幅な強度アップによって波浪に耐える高い耐久性と、帆走時の優れた直進性と横風への強さが得られる点です」


 最古参の海賊船大工の甚兵衛から手が上がった。


「誠様、デメリットは?」


「デメリットは喫水が深いので遠浅の海や河川への乗り入れができません。つまり海賊行為をするのには向いてない点です」


「わかりました、港間の航行が目的の商船ということですね?」


「そのとおりです。商売上、平船が必要になれば、またその時に作るようにします」


 今度はアリスから手が上がった。


「誠、その船の設計上のヒントは模型以外にないの?」


「うん、無いので、そこはアリスと椿と甚兵衛で知恵を絞って考えてほしいんだ」


「わかったわ、任せて」


「じゃあ、先に進むね。船の大きさだけど、全長18~20m、全幅5~5.5m、喫水2~2.5mで作ってほしい。事前にアリスに計算してもらったんだけど、少人数の人力で船を航行させるには、このくらいのサイズが限界らしいことが分かったので、この大きさを目安にしてください」


 甚兵衛から手が上がる。


「誠様、武装はどうするのですか?」


「今のところ、甲板上に主砲2門、副砲を2門搭載する予定です。この大砲は、椿が作った長距離狙撃用の銃を大型化したものを新たに開発してもらう予定です。従来の大砲よりも射程と威力が上がると期待してます。目標は射程外から敵船を撃沈できる性能の達成です」


「誠、そっちの方は任せてくれ! たぶん大丈夫だ」


「椿もこう言っているので心配ないと思います。エドワードさんからもポルトガル商船に搭載している大砲の知識を教えてもらえることになっているので、良いものが積めると思いますよ」


「誠様、それはもはや商船ではないです。こりゃ海賊船より強そうだ」


 甚兵衛も納得したようだ。


「次に船の動力ですが、主な動力は帆走とします。補助動力として初期は人力、最終的には開発中の蒸気エンジンを搭載する予定です。蒸気エンジンについては、開発途中のものを皆さんに後で見学してもらいます」


 今度は瑞波から手が上がった。


「誠様、人力は従来の手漕ぎ式ですか?」


「まったく違った仕組みにする予定です」


 誠はスクリューの模型を皆に見せた。


「このスクリューという羽を足こぎ式の仕組みで動かす予定です。手漕ぎよりも疲れが少ないと思います。あと、仕組みですが、以前にアリスと椿に作ってもらった変速機付きの三輪車を利用するつもりです」


「なるほどな、三輪車ならレースで散々改造してきたから船用にも上手く応用できると思うぞ」


「椿、ありがとう。でもスクリュー自体のヒントはこの模型しかないので、細かい設計はアリスと椿に丸投げになると思う」


「誠、そこは心配しなくていいわ」


「アリス、ありがとう。いつも助かる」


「他には、船体には焙烙玉対策で、耐火処理を工夫して施してほしいのと、敵の大砲対策で船体に鉄板を貼ってほしい。ただし、鉄の装甲は船の動力性能に悪影響が出ない程度にしてほしいんだ。つまり、船の足が遅くならない程度の装甲に上手く調整してほしい」


「誠、それは装甲よりも船の速度優先ということでいいのね」


「アリス、そのとおりだよ」


「船の設計に関しては大体、こんな感じで、次に建造場所だけど、例の隠れ浜にします。あそこなら洞窟付近の水路は入江の外まで水深があるから、船の出入りも問題ないと思います」


「誠様、確かにあの入江なら外から見えないし、喫水の深い船でも余裕で通れると思いますよ」


「船大工の甚兵衛のお墨付きをもらったから問題ないようだね」


「それで、その水路に面した傾斜した地形に木造の骨組み船台を作って、さらにその上に竜骨盤木を並べて建造してほしいんだ」


 誠は傾斜船台の模型をテーブルの上に置き、さらにその上に船の模型を置いて見せた。


「誠様、これなら儂らの大工技術でも作れそうだから大丈夫です」


「そうか、よかったよ。この辺は甚兵衛達の方が詳しそうだから任せてしまっていいかな?」


「はい、お任せください」


「あと、完成後の船の運用なんだけど、帆走ができるようになった時点で、試験的に何回か使ってみてほしい。動力は完成次第、船を揚陸して取り付けて試運転といった感じかな」


「誠、他には注文はないのか?」


「椿、僕の方からは特にないかな。じゃあ、船の開発の統括責任者は椿、設計責任者はアリス、甚兵衛には二人の補佐と建造現場の監督をしてほしいんだけどいいかな?」


「誠様、この甚兵衛、確かに承りました」


「私が統括責任者か、大船に乗ったつもりで任せろ!」


「誠、設計の方は安心して私に任せて」


 このように最初の開発会議は何事もなく終わることができた。




===


 その後、意気揚々と建造を始めようとした開発メンバーだったが、いきなり出鼻を挫かれることになった。


「誠様、船の竜骨に使う木材なんですが、アリスさんが計算で出した大きさのものだと乾燥には伐採してから3~3.5年は必要なんですが、どうします?」


「甚兵衛、それは仕方ないよ。ズルしないでしっかり乾燥させよう。木材が乾燥するまでは、他の仕事を頼む」


 といった具合に、船を作ろうにも木材の乾燥だけで数年待つことになった。


「それに、小型の試作船なら乾燥に時間もかからないだろうから、まずは小さい船を作って問題点を洗い出してみてよ」


「誠、分かったわ。私が実験用の小型船の設計をして、甚兵衛達に作ってもらうことにする」


「誰も建造経験の無い船を作るわけだから、まずは小型の船で実験した方がいいよね。丁度よかったんじゃない? 3〜4年なんてあっという間だよ」


 前世では数年単位で研究を行うのが当たり前だった誠にとって、今回のようなトラブルは日常茶飯事だった。


「3〜4年も待つのですか……」


 だが、お家再興が悲願の海賊組は待ち時間の長さに落胆した。


「皆、新しいものを作るんだから、数年かかるのなんて当たり前だって! 気を取り直して出来ることからコツコツやって行こうよ。小型の実験船を作るのだって簡単じゃないよ。たぶん何回も失敗するし、試行錯誤も必要になるから退屈はしないと思う」


「誠様、わかりました。まずは小型船の建造を成功させてみせます!」


「うん、甚兵衛、わかってくれて嬉しいよ」


 このような結論で開発メンバーは納得してくれたようだった。




===


 一方で、中堅どころの船大工の一人、長助ちょうすけ(42歳)は、今回の造船計画の遅延決定に独りほくそ笑んでいた。


「木材の準備に4年って、頭おかしいんじゃないのか? こりゃお家再興が遅れることに不満をもつやつが現れそうだな。そいつらを扇動して、この里から出ることにするか?」


 この時、長助は自分がまるで革命家のように誇らしく思えてならなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ