第80話
『僕は”夏目幸隆”の会社を調べ、一人で幸隆の会社へ向かった。
そして、実の母親を捨てたことを謝らせようと、幸隆に迫ったんだ。
だけど……』
『「そんな女は知らん!」』
『幸隆は、そう言って僕の母親との関係をなかったことにしようとした。
僕は、幸隆がそんな態度を取るかもしれないと、どこかで覚悟していた。
だけど……実の母親との時間まで、すべて否定しようとする幸隆の姿を見て、僕は胸が締め付けられるような思いだった。』
『そんな苦しい気持ちのまま、家へ帰ろうとしていた時だった。
まさか……キミに出逢うなんて思ってもいなかった。
僕はあまりの辛さに耐えられなくなって……。
誰かに、この苦しみを受け止めてもらいたくて……。
気が付いたら、キミに抱き付いていた。』
『本当にごめん……。
突然、あんなことをされたら、キミが嫌がると思った。
だけど、キミは戸惑いながらも僕を拒絶しなかった。
それどころか、僕のことを優しく受け止めてくれた。
まるで、凍り付いていた僕の心を包み込んでくれるようだった。
ありがとう……小町。』
『ずっと背負っていた重荷から解放されて……。
僕は、やっと気付いたんだ。
僕が本当に大切にしたいものが何なのかを……。
それがキミだった。』
『もっと早く、この気持ちに気付いていればよかった。
だけど……そんな時に、妹・佐奈があんな病気になった。』
『僕は迷った。
小町と一緒にいたい気持ち。
佐奈を助けたい気持ち。
どちらも僕にとって、本当に大切なものだったから……。』
『だから僕は決めた。
まずは、妹を助けることを……。』
小町は震える手で手紙を握り締めた。
俊哉がどれほど苦しみ、どれほど一人で抱えていたのか……。
その想いが、痛いほど伝わってきた。
小町の瞳から、また涙が溢れ落ちた。




