第79話
『僕は、実の母さんを捨てたあの人に……。
母さんを傷つけたことを謝ってほしかった。
そのために、あの人について必死に調べた。』
『そして、やっとの思いで、母さんを捨てた男の居場所を突き止めた。』
『僕は今の母さんに無理を言った。
そして、あの人が暮らしている君の街へ引っ越してきたんだ。』
『まさか、転校する学校へ向かう途中で、君と出会うなんて思ってもいなかった。』
『初めて君を見た瞬間……。
あまりにもまっすぐで、可愛い君に、僕の心は奪われた。』
『僕は本当は偶然を装って、君と出会ったんだ。』
『君は、僕が思っていた通りの女の子だった。』
『だけど……君と出会ったことは、僕にとって間違いだったのかもしれない。』
『君と一緒に過ごす時間が増えるほど、僕は本来の目的を忘れていった。』
『そして、幸せを感じるたびに苦しくなった。』
『妹の佐奈も君に懐いて、まるで本当のお姉ちゃんのように慕っていた。』
『そんな二人を見ているうちに、僕は自分が何をすればいいのかわからなくなった。』
『復讐のために来たはずなのに……。
君と過ごす時間が、僕にとってかけがえのないものになっていたんだ。』
『僕は悩みに悩んだ。
そして、最後には自分の決めたことをやり遂げることにした。』
『実の母さんを捨てた男……。
今では大企業の社長となった――。
夏目幸隆のもとへ行くために……。』
小町は手紙に書かれている名前を見た瞬間、息をのんだ。
そこに書かれていた名前――。
それは、小町の幼馴染みである遥の父親の名前だった。
夏目幸隆。
その名前を、小町は知っていた。




