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第78話
『だが、その御曹司の両親は、母さんとの結婚を決して認めなかった。
そして、勝手に別の大企業の令嬢との縁談を進めていた。』
『御曹子はそんな両親の強引なやり方に反発し、家を飛び出した。
そして、母さんと一緒に駆け落ちをしようとしたんだ。』
『母さんは、これでやっと二人で幸せになれると思っていた。
だけど……。』
『駆け落ちをする直前になって、御曹司の気持ちは変わった。
あの人は……母さんを捨てたんだ。
そして、何事もなかったかのように、両親が決めた別の大企業の令嬢と結婚した。』
『その時、すでに母さんのお腹の中には僕がいた。』
『愛していた人に裏切られた母さんは、深い絶望の中で生きる希望を失いかけた。
自ら命を絶つことまで考えたんだ。』
『でも……。
お腹の中にいる僕まで失うことだけはできなかった。』
『母さんは思い直し、その人の前から姿を消した。
そして一人で僕を産み、育てていくことを決めたんだ。』
あまりにも衝撃的な内容に、小町は言葉を失った。
俊哉が抱えていた苦しみ。
そして、亡くなった実の母親が背負っていた苦しみ。
そのすべてを初めて知った小町の胸には、深い悲しみが込み上げていた。




