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第76話

 吹き抜ける風――。


 とても心地良いはずなのに、その風が頬を撫でるたび、小町の胸には俊哉と過ごした日々が

 鮮明によみがえった。


 昼休みの屋上。


 何気ない会話。


 笑い合った時間。


 その一つひとつが思い出され、再び小町の瞳から涙があふれ落ちる。


 一頻しきり泣いた小町は、ふと屋上を囲むフェンスの下に、

 小さく白いものが挟まっているのを見つけた。


 『な、なに……?』


 恐る恐る近づき、それを手に取る。


 白い封筒だった。


 しかも、表には――


 『春野小町へ』


 見慣れた俊哉の字で、そう書かれていた。


 『なに……これ?』


 震える手で封を開き、中の便箋を取り出す。


 そこには、俊哉から小町へ宛てた手紙が入っていた。


 ゆっくりと便箋を開く。


 そこに書かれていた最初の一文は――


 『ごめんな、小町。』


 その一言を目にしただけで、小町の瞳から再び涙がこぼれた。

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