第71話
小町は少し腹を立てながら、
「そんなこと、あんたには関係ないでしょ!」
と吾郎に言い返した。
すると吾郎は、からかうように笑って、
「お前……フラれたんじゃないのか?」
と言った。
その一言に、小町はカチンときた。
「あんたには関係ないわよ!」
そう言い放つと、小町は一方的に電話を切った。
だが、強がってはみたものの、俊哉と連絡が取れないことへの不安は消えなかった。
『もしかして……吾郎の言うとおりなのかな……』
そんな考えが頭をよぎり、小町の胸は締めつけられた。
さらに翌日――。
冬休み中の登校日。
久しぶりに学校へやって来た小町は、教室へ入るなり俊哉の席へ目を向けた。
だが、そこに俊哉の姿はなかった。
『やっぱり……おかしい』
昨日から抱いていた不安が、一気に大きくなる。
ホームルームが始まる前に、小町は教室を飛び出した。
向かった先は、いつも俊哉と昼休みを過ごしていた屋上だった。
勢いよく扉を開ける。
冷たい冬の風が吹き抜ける屋上には、誰の姿もなかった。
俊哉はいない。
『どうして……』
小町はその場に立ち尽くした。
冷たい風が頬を撫でるたび、胸の奥にぽっかりと穴が開いたような気持ちになる。
やがて重い足取りで教室へ戻ると、すでに担任の先生が教壇に立っていた。
「こらっ、春野! また遅刻か!」
担任の声が教室に響く。
小町は一瞬だけ担任に視線を向けると、
「す、すみません……」
と小さく謝り、力なく自分の席へ座った。




