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第69話

翌日――。


俊哉は病室のベッドで眠る妹・佐奈の手をそっと握りながら、自分の無力さを噛み締めていた。


『俺にもっと力があれば……』


そう思うことしかできず、悔しさに俯いていると、


「俊哉! た、大変よ!」


慌てた様子で、母親の香奈が病室へ駆け込んできた。


突然のことに俊哉は驚き、


「ど、どうしたんだ?」


と立ち上がって尋ねた。


香奈は息を切らしながらも、興奮を抑えきれない様子で言った。


「大変なの! 佐奈の手術費用を、急に病院が負担してくれることになったの!」


「それだけじゃないの。佐奈の手術の日程まで急に決まったのよ!」


「えっ……?」


俊哉は思わず言葉を失った。


『嘘だろう……』


あれほど手術費用の問題で難しいと言われていたのに、突然すべてが決まるなんて信じられなかった。


『まさか……』


俊哉の脳裏に、一人の人物の顔が浮かぶ。


夏目幸隆――。


昨夜、自分が助けを求めて電話をかけた相手だった。


しかし俊哉は、すぐに首を横へ振った。


『いや……あの人が、そんなことをするはずがない……』


そう思おうとした。


だが、この状況を動かせる人物に心当たりがあるとすれば、それは幸隆しかいなかった。


俊哉は戸惑いを隠せないまま、香奈に尋ねた。


「……それで、手術はいつなんだ?」


香奈は少し表情を曇らせながら答えた。


「……三日後よ」


そして、一呼吸置いて続けた。


「手術は……アメリカの大きな病院でするそうよ」


「三日後……? それに、アメリカで?」


俊哉は目を見開き、思わず聞き返した。

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