第67話
不良っぽい格好をした吾郎が、
「わりぃ! 遅れた!」
と言いながら、小町の前に駆け込んできた。
吾郎の姿を見た小町は、思わず、
「ご、吾郎……」
と呟いた。
吾郎は最初、状況がまったく飲み込めなかった。
しかし、小町が見知らぬ男に腕をつかまれ、無理やり連れ去られそうになっているのを見るや、
「なんだ、てめぇ!」
と、その男に食ってかかった。
突然現れた不良風の男――吾郎が小町の知り合いだと分かると、
『やばい!』
男の表情が一変した。
そして慌てて小町の手を離すと、人混みの中へ逃げるように姿を消していった。
ようやく解放された小町は、安堵の息をつき、
「ありがとう……助かったわ、吾郎」
と、珍しく素直に礼を言った。
まだ状況がいまいち理解できない吾郎は、
「一体、何があったんだよ。急に呼び出したと思ったら……」
と事情を尋ねた。
小町は逃げていった男の方を見ながら、
「友達と待ち合わせしていたら、あの人がしつこくて……」
と、少し腹立たしそうに答えた。
吾郎も男が消えていった人混みへ目を向け、
「待ち合わせね……。相手は、アイツ【俊哉】か?」
と探るように尋ねた。
その言葉に小町はドキッと肩を震わせる。
「ば、バカね! 女友達よ!」
咄嗟に誤魔化すと、俊哉へ電話を掛けようとしていた携帯電話を慌ててポケットへしまった。
そんな小町を見て、吾郎は苦笑する。
「お前、相変わらず分かりやすいなぁ……」
そう呟くと、肩をすくめながら続けた。
「まあ、いいや。そいつが来るまで、一緒にいてやるよ」
吾郎はそう言って、小町の隣に残った。
しかし――。
一時間経っても。
二時間経っても。
俊哉が待ち合わせ場所に姿を現すことはなかった。




