第66話
その頃――。
小町は俊哉との待ち合わせ場所である駅前の銅像の前で、落ち着かない様子で辺りを見回していた。
『まだかな……』
時計を何度も見ながら、俊哉が来るのを今か今かと待ち続ける。
しかし、約束の時間を過ぎても俊哉は姿を見せなかった。
その時だった。
「ねぇ、君。一人?」
大学生風の男が、軽い口調で小町に声を掛けてきた。
小町は愛想なく首を振り、
「いいえ。待ち合わせをしているので」
とだけ答え、男から視線を逸らした。
だが、男は諦めようとしない。
小町の前へ回り込むと、
「そんな来ない男なんて放っておいてさ。俺と遊ぼうよ」
と、しつこく誘ってきた。
『迷惑だなぁ……』
小町はため息をつき、男から距離を取るように歩き出した。
そして携帯電話を取り出すと、俊哉へ電話を掛ける。
しかし――。
何度呼び出しても、電話に出ることはなかった。
『どうしたんだろう……』
不安そうに携帯電話を見つめる小町。
その隙を狙うように、
「だからさぁ……」
大学生風の男が再び後ろから近づいてきた。
小町がなおも無視を続けていると、男はついに苛立ったような表情を浮かべ、
「いい加減にしろよ!」
そう吐き捨てると、小町の腕を乱暴につかんだ。
「こっちへ来い!」
男はそのまま、小町を強引に連れ去ろうとする。
『もうダメだ……!』
小町が半ば諦めかけた、その瞬間――。




