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第65話

 救急車で病院へ運ばれた佐奈は、幸いにも一命を取り留めた。


 しかし、病気が再発したため、そのまま再び入院することになった。


 病室のベッドで意識を取り戻した佐奈は、着替えを取りに帰った香奈に代わり、付き添っていた

 兄・俊哉の手を弱々しく握った。


「お兄ちゃん……。今日は、お姉ちゃん【小町】とデートなんでしょ? 私なら大丈夫だから……

 お姉ちゃんのところへ行って……」


 か細い声でそう呟く。


 俊哉はその小さな手をそっと握り返し、優しく微笑みながら言った。


「バカを言うな。こんな時に、お前を置いて行けるわけないだろう」


 少し間を置いてから、


「春野にはあとでちゃんと電話する。だから、そんなことは気にしないで、ゆっくり休め」


 と静かに続けた。


「うん……」


 佐奈は安心したように小さく頷くと、ゆっくりと目を閉じた。


 病室に静かな寝息だけが響く。


 俊哉は眠る佐奈の顔を見つめながら、小さく息をついた。


 佐奈には「気にするな」と言ったものの、待ち合わせ場所で自分を待っているはずの小町のことが

 気になって仕方がなかった。

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