第64話
支度を終えた俊哉は、玄関で靴ひもを結びながら、隣で小町に会えることを楽しみに
終始うきうきしている佐奈を横目で見て、大きくため息をついた。
「準備はできたか?」
俊哉が声を掛けると、
「はーい!」
佐奈は元気よく返事をし、勢いよく立ち上がった。
俊哉はもう一度ため息をつき、
「それじゃあ、行ってきます」
と家の中へ声を掛けると、佐奈と並んで玄関を出た。
その直後だった――。
佐奈の足がふらりとよろめいた。
「……あれ?」
立ちくらみでも起こしたのか、佐奈はその場で立ち止まり、身体を大きく揺らした。
そのまま後ろへ倒れそうになった佐奈を、
「危ない!!」
俊哉はとっさに抱き留めた。
「佐奈! 大丈夫か?」
心配そうに尋ねると、佐奈は無理に笑顔を作り、
「だ、大丈夫……」
と言って俊哉の腕から離れた。
「ほら、大丈夫だから!」
そう言って歩き出したものの、その足取りはどこかおぼつかない。
そして数歩進んだところで、再び足を止めた。
身体が大きく揺れたかと思うと、
そのまま力が抜けるように、その場へ崩れ落ちた。
「佐奈!!」
俊哉は一瞬、何が起こったのか理解できず立ち尽くした。
しかし、すぐに我に返ると、慌てて佐奈のもとへ駆け寄る。
「おい、佐奈! しっかりしろ! 佐奈!」
必死に呼び掛ける。
だが、佐奈はぐったりとしたまま、俊哉の声に何ひとつ応えなかった。
俊哉の顔から血の気が引く。
「母さん!! 母さん!!」
悲鳴にも似た声で家の中へ叫ぶ。
「佐奈が大変なんだ!!」




