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第63話

 俊哉は困ったような表情を浮かべ、


「母さん……佐奈が俺たちに付いて行くって言うんだけど……」


 と香奈に助けを求めた。


 普段はあまり人に頼ることのない俊哉だったが、今日ばかりは香奈なら

 何とかしてくれるかもしれないと思った。


 ――しかし、一歩先を行っていたのは佐奈だった。


 いつの間にか、佐奈はすっかり香奈を味方につけていたのである。


 香奈は佐奈が選んだ服を着せ、髪をきれいに整えながら、


「いいじゃない。兄妹で一緒に行ってきなさい」


 と、笑顔で俊哉に言った。


『おいおい……。せっかく小町とのデートなのに……』


 俊哉はがっくりと肩を落とした。


 すると、


「家来! 用意はまだ?」


 お気に入りの帽子をかぶり、すっかり準備万端の佐奈が、得意げに俊哉の前へ現れた。


 そんな佐奈を見た俊哉は、大きくため息をつく。


「はいはい……。ちょっと待ってろ。すぐ準備するから」


 そう投げやりに答えると、俊哉は苦笑しながら自分の支度を始めた。

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