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第62話

 俊哉も数少ない洋服をクローゼットから引っ張り出し、小町とのデートに何を着て行こうかと

 鏡の前であれこれ悩んでいた。


 その横では、退院してすっかり元気を取り戻した妹の佐奈が、服を自分の身体に当てながら、

 楽しそうに鼻歌を歌っていた。


 そんな佐奈の様子を俊哉は横目で見て、呆れたように笑うと、


「なんでお前まで、そこで何をやってるんだよ?」


 と声を掛けた。


 佐奈は服を胸に当てたまま、にっこり笑って、


「決まってるじゃない。デートに着て行く服を選んでるの!」


 と得意げに答えた。


 俊哉は眉をひそめ、


「誰と?」


 と聞き返した。


 佐奈はきょとんとした顔で、


「決まってるじゃない。お姉ちゃん【小町】とよ」


 と、当たり前のように言い返した。


 その言葉に俊哉は一瞬目を丸くしたが、すぐにむきになって、


「バカを言うな! 春野は俺とデートするんだ!」


 と言い返した。


 すると佐奈はクスッと笑いながら、


「だったら、いいじゃん。みんなで一緒にデートしようよ!」


 と言って、選んだ服を抱えたまま、母親の香奈のもとへ駆けて行った。

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