第54話
俊哉は困ったように苦笑しながら、佐奈に優しく言った。
「気持ちはわかるけどな。でも、大人しくしていないと、早く家に帰れないぞ」
そう言うと、手にしていたコンビニの袋を持ち上げ、
「ほら、お前の好きなお菓子を買ってきた」
と佐奈に手渡した。
「わぁーい!」
佐奈は目を輝かせながら袋を受け取ると、大事そうに抱え、自分のベッドへ駆け戻った。
「どれから食べようかなぁ」
嬉しそうに袋の中を覗き込み、お菓子を一つひとつ取り出し始める。
その無邪気な様子を確認すると、俊哉はそっと立ち上がり、小町のそばへ歩み寄った。
そして佐奈に聞こえないよう、小さな声で尋ねる。
「……何で来たんだよ」
その表情は少し険しかったが、怒鳴るような口調ではなかった。
約束を破って来たことへの戸惑いと、心配が入り混じった声だった。
小町はその視線を受け止めきれず、俯いた。
「ご、ごめんなさい……」
小さく頭を下げる。
「どうしても佐奈ちゃんのことが気になって……」
その一言に、俊哉は何も言い返せなかった。
小さくため息をつき、視線を佐奈へ向ける。
その時だった。
「お姉ちゃん!」
お菓子を選んでいた佐奈が笑顔で手を振った。
「こっちに来て、一緒に食べよう!」
その無邪気な声に、小町は俊哉の顔をちらりと見た。
俊哉は呆れたように肩をすくめると、小さく頷く。
その様子を見て、小町もほっとしたように微笑み、
「うん!」
と返事をすると、佐奈のベッドへ歩み寄った。
「これ、おいしそう!」
「それね、佐奈も好き!」
二人は楽しそうにお菓子を選び始める。
そんな二人の笑顔を少し離れた場所から見つめながら、俊哉は小さく息を吐いた。
「……まったく」
困ったように笑みを浮かべながらも、その表情にはどこか安堵の色が滲んでいた。




