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第51話

 佐奈は、小町の家に泊まって以来、すっかり春野家が気に入ってしまったようだった。


 休みの日になると、


「お姉ちゃん、遊びに来たよ!」


 と元気いっぱいにやって来ては、そのまま泊まっていくことも珍しくなかった。


 小町の母・紀美代も、そんな佐奈を実の娘のように可愛がり、家の中はいつも笑い声であふれていた。


 そんな日々が、しばらく続いた。


 しかし――。


 夏が終わり、秋の気配が感じられるようになった頃から、佐奈はぱったりと春野家へ姿を

 見せなくなった。


 ある日の夕食時。


 紀美代は食卓でぽつりと呟いた。


「どうしたのかしら、佐奈ちゃん……。最近、全然遊びに来なくなったわね」


 少し心配そうな表情で小町を見る。


「何か聞いてる?」


 小町は首を横に振った。


「ううん……。私も何も聞いてない」


 その言葉に紀美代は小さくため息をついた。


「何もなければいいんだけど……」


 その何気ない一言が、小町の胸に引っ掛かった。


 翌日。


 小町は昼休み、屋上で俊哉と二人きりになると、思い切って尋ねた。


「ねぇ、佐奈ちゃん……最近どうしたの? 全然うちに遊びに来ないけど」


 その瞬間だった。


 俊哉の表情から笑みが消えた。


「……」


 しばらく黙ったまま空を見上げていた俊哉は、やがて小さく息を吐く。


「実は……」


 その声は、いつになく重かった。


「佐奈が病気になって……」


 それだけ言うと、俊哉は唇を噛み締めた。


「えっ……」


 小町は思わず息を呑む。


 胸がざわつく。


 ついこの前まで、あんなに元気いっぱいだった佐奈が――。


「そ、そうだったの……」


 それ以上、何を言えばいいのかわからず、小町はただ俊哉を見つめることしかできなかった。


 屋上を吹き抜ける秋風だけが、二人の間を静かに通り過ぎていった。

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