表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
45/79

第45話

 沈黙が二人を包んだ。


 ほんの数分しか経っていないはずなのに、小町には何時間にも感じられる。


 何を話せばいいのかわからない。


 佐奈もどこか気まずそうに俯いたままだった。


 ――困ったな……。


 小町が内心でため息をついた、その時だった。


 ピンポーン――。


 玄関のチャイムが鳴り響いた。


 『助かった……!』


 小町は思わず立ち上がった。


 まるで救いの手が差し伸べられたような気分だった。


 急いで玄関へ向かい、ドアを開ける。


 するとそこには、息を切らした俊哉が立っていた。


 額にはうっすら汗が滲んでいる。


 かなり慌てて駆けつけたのだろう。


 しかし、その表情は険しかった。


 俊哉は小町を見るなり、


「佐奈は?」


 低い声で尋ねた。


 小町は少し驚きながらも、


「リビングにいるけど……」


 と答えた。


 俊哉は大きく息を吐き、気持ちを落ち着かせるように深呼吸をする。


 そして、


「お邪魔する」


 とだけ言うと靴を脱ぎ、足早に家の中へ入っていった。


 小町も慌ててその後を追う。


 リビングへ入った瞬間だった。


 ソファに座る佐奈を見つけた俊哉の顔が一変した。


 安堵ではなく、怒りだった。


「佐奈!」


 鋭い声が部屋に響く。


 佐奈はビクッと肩を震わせた。


「こんなところで何をしているんだ!」


 俊哉は怒鳴った。


 佐奈は怯えたように身体を縮こませる。


「ご、ごめんなさい……」


 小さな声で謝る佐奈。


 だが俊哉の怒りは収まらない。


「勝手に家を飛び出して! どれだけ心配したと思ってるんだ!」


 そう言って俊哉は佐奈へ歩み寄った。


 その勢いに、小町は思わず息を呑む。


 俊哉が手を振り上げた。


 ――叩く気なの?


 その瞬間だった。


「ダメ!」


 小町は反射的に叫んでいた。


 気付けば俊哉と佐奈の間へ飛び込んでいる。


 両腕を広げるようにして佐奈を庇った。


 俊哉は驚いたように目を見開いた。


「春野さん……」


 だが小町は引かなかった。


 胸はドキドキしている。


 本当は怖かった。


 けれど、それ以上に佐奈を守りたかった。


「佐奈ちゃんを怒らないで!」


 小町は真っ直ぐ俊哉を見つめた。


「でも――」


「佐奈ちゃんだって悪気があったわけじゃない!」


 俊哉の言葉を遮るように小町は言った。


「ただ心配だっただけでしょ!?」


 俊哉は何も言い返せなかった。


 小町の言葉が胸に刺さったからだ。


 佐奈は小町の後ろで泣きそうな顔をしている。


 しばらく重い沈黙が流れた。


 やがて俊哉は握り締めていた拳をゆっくりと下ろした。


 そして顔を伏せる。


「……悪い」


 その声は先ほどまでの怒鳴り声とは違い、ひどく弱々しかった。


 小町はそんな俊哉を見て、胸が締め付けられた。


 怒っているのではない。


 俊哉もまた、不安だったのだ。


 大切な妹を失うかもしれない恐怖に。


 そのことを、小町は少しだけ理解した気がした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ