表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
38/76

第38話

『はぁ?……』


 遥の言葉に、俊哉は思わず眉をひそめた。


 遥はそんな俊哉の反応など気にも留めず、一歩距離を詰める。


「小町とできたなら……私ともできるわよね?」


 そう言うと、遥は俊哉の腕にしがみつき、そのまま身体を寄せた。


 俊哉は顔をしかめた。


「何を言ってるんだ……」


「いいじゃない」


 遥は甘えるような声を出しながら、さらに俊哉へ顔を近づける。


 その瞳には、恋する少女の熱とは違う、どこか危うい執着の色が宿っていた。


「やめろ!」


 俊哉は強引に腕を振りほどこうとした。


 だが、遥は離れない。


「どうして? 私じゃダメなの?」


「そういう問題じゃない!」


 俊哉の声が少し強くなる。


 それでも遥は諦めなかった。


「ねぇ……」


 遥は背伸びをし、唇を近づける。


 あと少しで触れそうになった、その瞬間だった。


「た、大変だ!!」


 突然、切羽詰まった声が響いた。


 俊哉と遥は同時に振り返る。


 そこには息を切らした吾郎が立っていた。


 突然の乱入に、二人は慌てて距離を取る。


 遥は一瞬だけ、邪魔をされた苛立ちを隠しきれず、鋭い視線を吾郎へ向けた。


「どうしたのよ?」


 不機嫌そうな声だった。


 吾郎は肩で息をしながら俊哉を見る。


「さ、佐奈ちゃんが……!」


 その言葉を聞いた瞬間。


 俊哉の顔色が変わった。


「佐奈がどうした!?」


「倒れたんだ!」


 吾郎の言葉に、俊哉の心臓が大きく跳ねた。


 嫌な予感が全身を駆け巡る。


 頭の中が真っ白になる。


「っ!」


 次の瞬間、俊哉は駆け出していた。


 吾郎の横をすり抜け、人混みの向こうへ。


 ただ一人の妹のもとへ。


 遥の声も、周囲のざわめきも、もう耳には入らなかった。


「佐奈……!」


 その背中には、隠しきれない焦りと恐怖が滲んでいた。


 俊哉の姿が見えなくなると、遥は怒りで顔を歪めた。


 そして目の前の吾郎を睨みつける。


「この馬鹿っ!!」


 勢いよく吾郎の脛を蹴り上げた。


「痛っ!!」


 吾郎が飛び上がる。


「あと少しだったのに!」


 遥は悔しそうに唇を噛んだ。


 しかし次の瞬間には表情を切り替え、


「……っ!」


 俊哉が走り去った方向へ駆け出す。


 その胸の中には、小町への嫉妬と焦りが渦巻いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ