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第35話

「まあまあ……みんな仲良く行こうよ」


 俊哉は苦笑しながら、その場を取りなした。


 遥は小さく頷いたものの、納得している様子ではなかった。


 五人はそのまま体験型アミューズメントパークの中へと足を踏み入れる。


 施設の中は休日ということもあり、多くの人で賑わっていた。


 その途中――


 遥は吾郎の腕を引っ張ると、人混みから少し離れた場所へ連れて行った。


「ちょっ……何だよ?」


 吾郎が困惑した顔を向ける。


 遥は周囲を確認してから、小声で言った。


「わかっているわよね?」


「何が?」


「小町を塩江くんから離すこと」


 吾郎は思わず顔をしかめた。


「まだ言ってるのかよ……」


「約束したでしょ?」


 遥は吾郎の腕をぎゅっと抓った。


「痛っ!」


 吾郎は慌てて腕を引っ込める。


「わかった、わかったから!」


 遥はようやく手を離した。


 だが、その表情はどこか不安そうだった。


「私……負けたくないの」


 小さく呟く。


 吾郎はそんな遥を見て、何も言えなくなった。


 幼い頃から知っている。


 遥が本気で誰かを好きになったことなど、一度もなかった。


 だからこそ余計に必死なのだろう。


「だから約束、忘れないでよ」


 遥はそう言うと、小町たちの方へ視線を向けた。


 その視線の先では――


「ねぇねぇ、お姉ちゃん! 今度はあっち!」


 佐奈が楽しそうに小町の手を引っ張っている。


「ちょ、ちょっと待って!」


 小町は苦笑しながら引っ張られていた。


「今度はこっち!」


「佐奈ちゃん、そんなに急いだら――」


 言い終わる前に、佐奈はさらに奥へ走っていく。


「こら! 勝手に行くな!」


 俊哉が慌てて声を上げた。


「迷子になるぞ!」


 だが佐奈は聞いていない。


 小町の手を握ったまま、人混みの中へ消えていった。


「まったく……」


 俊哉は大きくため息をついた。


 その様子を見ていた遥は――


 誰にも気付かれないよう、小さく拳を握った。


『今しかない……』


 胸の鼓動が少し速くなる。


 ようやく訪れた、俊哉と二人きりになれる機会。


 遥は緊張しながら、そっと俊哉の横へ歩み寄った。

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