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第28話

昼休み。


職員室の扉が開き、俊哉が姿を現した。


すると、そのすぐ近くの壁際で待っていた小町が立ち上がる。


「俊哉!」


声をかけられた俊哉は一瞬だけ足を止めた。


そして小町の姿を見つけると、わずかに眉をひそめた。


『なんでいるんだよ……』


そんな表情だった。


小町は心配そうに俊哉へ近寄る。


「大丈夫だった?」


その言葉に俊哉の胸が少し痛んだ。


本当は優しさだとわかっている。


心配してくれていることもわかっている。


だが――。


『これ以上、関わるな』


心のどこかで警鐘が鳴っていた。


俊哉は咄嗟に視線を逸らす。


「……君には関係ないことだ」


冷たい声だった。


小町は思わず立ち止まる。


「え……?」


俊哉はそれ以上何も言わず、そのまま歩き出した。


小町の胸の奥がチクリと痛む。


『なによ、それ……』


心配していただけなのに。


昨日まで普通に話していたのに。


小町は悔しさを噛みしめながら俊哉の後を追った。


「待ってよ!」


だが俊哉は振り返らない。


廊下を早足で進んでいく。


「俊哉!」


何度目かの呼び声で、俊哉は突然立ち止まった。


小町はほっとした。


しかし次の瞬間だった。


俊哉が振り返る。


その表情を見た小町は息を呑んだ。


今まで見たこともないほど冷たい顔。


まるで別人だった。


「付いてくるな」


低い声だった。


「え……」


「放っておいてくれ」


俊哉はそう言い残すと再び歩き出した。


小町はその場に立ち尽くした。


怒りとも悲しみとも違う感情が胸を締め付ける。


『なんなのよ……』


『心配してるだけなのに……』


涙が出そうになる。


だが、その時。


足元に何かが落ちていることに気付いた。


一枚の写真だった。


『なに、これ?』


小町はしゃがみ込み、それを拾い上げる。


古びた写真だった。


角は擦り切れ、色も褪せている。


まるで何十年も大切に持ち歩かれていたようだった。


写真には一人の若い女性が写っていた。


優しそうな笑顔。


どこか寂しげな瞳。


そして――。


不思議なことに、その女性はどことなく俊哉に似ていた。


『誰……?』


小町は思わず写真を見つめる。


名前も何も書かれていない。


ただ、その女性の笑顔だけが残されていた。


しばらく見つめていた小町だったが、ハッと我に返る。


『そうだ!』


俊哉を追わなければ。


慌てて顔を上げる。


だが――。


すでに廊下のどこにも俊哉の姿はなかった。


小町は写真を握り締めたまま立ち尽くす。


胸の中に残ったのは、俊哉への怒りではなかった。


あの写真の女性は誰なのか。


なぜ俊哉があれほど大切そうに持っていたのか。


そして――。


なぜ、あんな悲しい顔をしていたのか。


小町の胸には新たな疑問だけが残されていた。

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