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第25話

「本当なの?」


 春奈の言葉に続くように、クラス中の視線が小町と俊哉へ集中した。


 まるで裁判でも始まるかのような空気だった。


 小町は思わず身を固くする。


 俊哉も困ったように頭を掻いた。


「いや、その……」


 俊哉が口を開きかける。


 昨日のことを正直に話そうとした、その時だった。


 ガラッ――


 教室の扉が勢いよく開いた。


「お前たち! 朝から何を騒いでいる!」


 担任教師が大声を上げながら教室へ入ってくる。


 ざわついていた教室が一瞬で静かになった。


 『助かった……』


 小町は心の中で安堵の息を吐いた。


 これで話は終わる。


 そう思った。


 だが――


「先生!」


 誰かが勢いよく手を挙げた。


 嫌な予感がした。


 案の定だった。


「昨日、春野さんと塩江くんが街で抱き合っていたらしいです!」


 教室が再びざわつく。


「しかもキスしてたって!」


 別の生徒が面白半分に続けた。


 『だからしてないってば!』


 小町の顔が真っ赤になる。


 担任は驚いたように目を丸くした。


「本当か? 春野。塩江」


 教室中の視線が再び二人へ向けられる。


 小町は勢いよく立ち上がった。


「違います!」


 教室に響くほど大きな声だった。


 みんなが息を呑む。


「塩江くんに目に入ったゴミを取ってもらっただけです!」


 必死な否定だった。


 だが、その説明は逆効果だった。


 春奈が首を傾げる。


「ゴミ取るだけであんなに顔近づく?」


「確かに」


「怪しいよね」


 あちこちから声が上がる。


 小町はますます顔を赤くした。


 すると後ろの席から男子生徒が立ち上がった。


「俺の友達が見たって言ってたぞ」


 教室中が静まり返る。


「二人が抱き合ってたって」


 小町の心臓が大きく跳ねた。


 確かに抱き合った。


 でもそれは――


 恋人だからじゃない。


 俊哉が苦しそうだったから。


 ただ、それだけだった。


 だが、その事情をここで説明できるはずもない。


 小町は唇を噛み締めた。


 ふと隣を見る。


 俊哉は俯いたまま何も言わない。


 その横顔がどこか寂しそうに見えた。


 そして小町は気付く。


 今、否定すればするほど。


 噂はもっと大きくなるのだと――。

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