第24話
小町は教室へ入った瞬間から、何かがおかしいことに気付いていた。
クラスメイトたちがひそひそと話しながら、時折こちらを見ている。
そのたびに視線が逸らされる。
まるで何かを隠しているようだった。
居心地の悪さを感じながら、小町は自分の席へ向かった。
すると愛歌が慌てた様子で近付いてきた。
「小町……」
いつになく真剣な顔だった。
「どうしたの? この騒ぎ……」
小町が首を傾げる。
すると愛歌は驚いた顔をした。
「え? 知らないの?」
「何を?」
愛歌は呆れたように額を押さえた。
「この騒ぎの原因、小町じゃない」
「え?」
小町は目を丸くした。
「わたし?」
その声に反応したように、教室中の視線が一斉に小町へ集まる。
小町はますます混乱した。
その時だった。
ガラッ――
教室の扉が開いた。
「おはよう!」
明るい声と共に俊哉が入ってくる。
だが次の瞬間、俊哉も異変に気付いた。
教室中の視線が今度は自分へ向いている。
「え? なに?」
俊哉が戸惑った顔を見せる。
すると噂好きで有名な水無月春奈が待っていましたと言わんばかりに席を立った。
「ねぇ、塩江くん」
春奈はニヤニヤしながら俊哉に近付く。
「昨日、春野さんとデートしてたって本当?」
教室がざわついた。
俊哉は目を瞬かせる。
「は?」
春奈はさらに続けた。
「しかも、人前で抱き合ってたって聞いたよ?」
その言葉に小町の顔が一気に赤くなった。
昨日の出来事が脳裏に蘇る。
あの時、俊哉は確かに自分を抱き締めた。
だが――
「ち、違うわよ!」
小町は慌てて立ち上がった。
「変な噂を広めないで!」
「じゃあ何してたの?」
春奈が面白そうに訊く。
小町は一瞬言葉に詰まった。
俊哉も困ったように視線を逸らす。
教室中が二人の返事を待っていた。
小町は必死に言い訳を考える。
そして咄嗟に口を開いた。
「昨日、塩江くんに目に入ったゴミを取ってもらっただけ!」
「ゴミ?」
春奈が怪訝そうな顔をする。
「そう! それだけ!」
小町は必死だった。
だが教室中から、
「近くない?」
「そんなに顔近付ける?」
「怪しいなぁ」
という声が上がる。
そのたびに小町の顔はさらに赤くなっていく。
一方の俊哉も珍しく困ったように頭を掻いていた。
そんな二人の様子を見て、クラス中の疑惑はますます深まっていくのだった――。




