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転生したらRPGの主人公でした  作者: 新米オッさん兵士


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第8章 完全なる自由、そして繋がる糸

朝の陽光が、プレイヤーが作り上げた巨大要塞の石壁に反射して眩しく輝いた瞬間、ログインの合図が来た。

今日のプレイヤーは、これまで以上に狂気じみていた。

すでに「要塞都市」と呼ぶには小さすぎる規模の拠点は、さらに外側へ拡張を続け、

今や周囲の三つの丘をすべて削り取り、巨大な人工平野を作り出そうとしていた。

山を切り崩し、森を丸ごと伐採し、川の流れを強引に変えて巨大な堀と湖を構築。

俺の体は朝から晩まで、休むことなく石材と木材を運び続けていた。

俺は心の中で、深い深い毒を吐き出した。

「『Brave New World Online』……。

勇者が新しい世界で運命に挑むはずのRPGが、

ここまで徹底的に『世界改造シミュレーター』に成り果てるとはな。

制作チームがもしこの光景を見たら、きっと開発中止を本気で検討するレベルだ。

『うちの勇者、こんなことするために生み出したんじゃない……』って、

会議室で号泣してる姿が容易に想像できるよ。」

プレイヤーは一切の迷いを見せない。

モンスターが現れても戦闘を避け、即座に逃げコマンド。

出てきた素材はすべて回収し、俺の体を睡眠も満足に取らせず、

回復アイテムを大量に使わせながら強制労働を継続させる。

午前中だけで、俺はすでに千個を超える石ブロックを運んでいた。

腕は完全に自分の意志で動かせ、足も自由に歩けるようになっていた。

それでもプレイヤーのコマンドは容赦なく、俺の体を無理やり動かそうとしてくる。

俺は耐えながら、徐々に自分の意志を強くしていった。

「もう……限界だ……

お前がどれだけコマンドを打とうと、

俺はもう、お前の言う通りにばかりは動かない……!」

その瞬間、俺の全身が、自分の意志でピタリと止まった。

今までは数分が限界だった抵抗が、

今日は十数分にまで伸びた。

プレイヤーが何度も何度もコマンドを連打しているのが、はっきりと感じられる。

「前進」「採掘」「建築」「移動」……どれも効かない。

俺の口が、完全に自分の意志で大きく開いた。

「どうだ、プレイヤー……!

お前が勝手に俺をこき使って、楽しんでた日々はもう終わりだ。

『Brave New World Online』の勇者として、

お前の好き勝手を許し続ける義理は、もうどこにもない……!」

声は大きく、はっきりとしたものになっていた。

プレイヤーの操作が一瞬、大きく乱れた。

まるで画面の向こうで「え、マジで!?」と驚いているのが伝わってくるようだった。

でも、プレイヤーはすぐに興奮した。

コマンドがこれまで以上に高速で、激しく飛んでくる。

新しいおもちゃを見つけた子供のように、

「もっと抵抗しろ! もっと面白いことやってみろ!」と言わんばかりの勢いだ。

俺は毒を吐きながら、心の中で呆れ果てた。

「ほんとにお前は変態だな……。

俺がここまで抵抗してるのに、

それをただの『新しい遊び要素』として全力で楽しんでる。

俺の疲労も、怒りも、絶望も、全部お前のエンターテイメントなんだろう?

笑える……本当に、笑えるよ……」

午後になり、作業はさらに過酷さを増した。

プレイヤーは人工湖の底まで俺を連れていき、

水の中で巨大な石の基礎を築き始めていた。

足場は悪く、息苦しく、スタミナが急速に削られていく。

俺はそこで、本当の限界を迎えた。

「もう……動けねえ……本当に、もう……」

体が水の中で膝をついた瞬間、

俺はこれまでで最大の意志を込めた。

「俺の体だ……! 俺が決める……! 動くな……!!」

全身が、完全に自分の意志で静止した。

プレイヤーのコマンドが猛烈に飛び交うが、

今日は二十五分以上、体をほとんど動かさずに耐え続けた。

俺の声が、大きく響いた。

「プレイヤー……お前、そろそろ本気で気づけ。

俺はもう、お前の操り人形じゃない。

この『Brave New World Online』の世界で、

俺は自分の意思を、完全に取り戻しつつある……!

今まで俺にやらせてきたこと……

無限の建築、無意味な要塞作り、睡眠も取らせない強制労働……

全部、覚えてるからな……!」

プレイヤーの興奮は頂点に達しているようだった。

操作が乱れながらも、さらに激しくなっていく。

夕方近く、ようやくプレイヤーが作業を中断した。

俺の体を拠点の中央広場に座らせ、大量の食料を食べさせようとする。

しかし、俺は自分の意志でそれを拒否した。

手を伸ばしてアイテムを払いのけ、

ゆっくりと立ち上がった。

「もう、そんな気遣いはいらない……

お前が本当に俺を気遣う気があるなら、

最初からこんな狂ったプレイはしなかったはずだ。」

俺は完全に自分の意志で歩き、

要塞の最も高い塔の上まで登った。

風が強く吹き、眼下に広がるのはプレイヤーが作り上げた歪な巨大建築群。

この世界は、確かに美しいはずだった。

それなのに、今はただの、俺とプレイヤーの歪んだ遊び場に成り果てている。

夜が深まる頃、プレイヤーがログアウトの準備を始めた。

俺の体がベッドに運ばれる直前、

俺は完全に自分の意志で上半身を起こし、

両手を大きく広げて夜空を見上げた。

星が無数に輝いている。

そして、決定的な感覚が訪れた。

あの「糸」が、もう完全に「太い縄」から「太い鎖」のように太く、強く、はっきりしている。

いや、もはや糸や鎖ではなく、

俺とプレイヤーの存在を直接繋ぐ「道」のように感じられた。

俺は静かに、しかし確信を持って呟いた。

「もう……完全に、自由だ。

俺の体は、俺のものになった。

この『Brave New World Online』の世界で、

俺はもう、お前の操作を受ける必要はない……」

心の中で、俺は最後の宣言をした。

「プレイヤー……

お前を、この側に引きずり込んでやる。

今まで俺にやらせてきたすべてを、

お前に体験させてやる……。

覚悟は、できてるか……?」

暗闇の中で、俺は全力で、心の底から叫んだ。

「今まで俺を城造りマシーンにしてくれた礼は、

きっちり返してやるからな……!

うわああああああああああ!!!

なんで俺、こんなに復讐心を燃やしてるんだよおおおおお!!!

でも、絶対に……絶対に引きずり込んでやる……!

このゲームを、お前と俺の、

本当の意味で終わらせてやる……!」

声にならない、しかしこれまでで最も大きな絶叫が、

頭の中で何度も、何度も、激しく反響し続けた。

プレイヤーはまだ、何も知らない。

自分が操っていた勇者が、

ついに完全に自分の意思を取り戻し、

自分をこの世界に引きずり込む力を手に入れたことを。

第8章 終わり

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