#2 異変を起こす
「・・・今何て?」
「だから、妖霧を撒いて欲しいの」
紅魔館・・・その主であるレミリア・スカーレットの自室に呼び出されたジャスミン・スカーレットムーンは思わず訊き返した
「お嬢様、いくらなんでもそれは説明不足なのでは?」
「仕方ないでしょ、目の前に使えそうな人材が居るんだから」
ジャスミンがここへ来て数日、既に住民として馴染んだ彼女に出された指示は無茶振りとも取れる要求だった
「簡単に言うと、『異変』を起こすのよ」
「・・・で、その理由は」
「暇潰し」
「・・・・・」
「・・・と言うのが表向きの理由で、本来の理由はスペルカードルールがどれだけ浸透しているのか、お嬢様直々に確認したいそうです」
「説明ありがとう、咲夜
今代の『博麗の巫女』の実力は既に知ってるし、この館の存在はこっちに来たときに派手にアピールしたから、それ以外にやることもないのよ」
「・・・普通に里に出向けば良いのでは?」
「前回あれだけの騒ぎを起こしたのと、吸血鬼が居るって事であまりいい顔されてないのよ
だから、これを使うの」
そう言いながらレミリアは一枚の紙切れを寄越した
「これは?」
「ああ、説明してなかったっけ
それがスペルカード、正式名称『命名決闘法』に則って戦うために必要なアイテムよ」
紙切れ・・・とは言ってもそれなりの厚さとサイズのあるカード状の物だが・・・には簡単な図柄と名前、細かな内容が記されていた
因みにこのカードには『神罰「幼きデーモンロード」』と書かれていた
「そのカードに記した内容に従って弾幕を張るのよ」
一瞬、銃火器で張った弾幕が浮かんだが、恐らく違うだろう
「・・・お嬢様、根本的な部分から説明したほうが宜しいかと」
「そうね
まず貴女の場合は魔力を使うのだけれど、それで弾を作り出すのよ」
こんな感じに、と言ったレミリアの指先には小さな赤い玉が浮かんでいた
「これなら大規模な攻撃魔法を行使するよりも魔力は必要としないし、何よりある程度の距離で消滅するようにしてしまえば周りに被害は及ばない」
いつの間にかパチュリーまでもが部屋の中にいた
「ただし、慣れるまではかなりエネルギーを持って行かれるわ
元々は霊力の少ない人間が妖怪に対抗するために御札でやってたんだけど、次第に霊力や魔力、妖力といった力で代用するようになったのよ」
弾幕を張るほどの御札だと嵩張るし、とパチュリー
「で、これを複数自分の周りに放って弾幕を形成するの
ただ、命名決闘法で行われる戦闘が『弾幕ごっこ』と呼ばれるように、相手を直接殺傷させるようなのはNG
あくまでもこれは遊びだから、相手が回避可能な物しか使えないの
因みに弾の形はあんまり決まってるわけじゃないから、イメージし易い物がいいわね」
「あと、弾幕は攻撃が目的、と言うわけではなく、他者から見たときの『美しさ』もポイントの内ですね」
「・・・美鈴?」
「妖精メイドに呼ばれたんですよ
今は代わりに門番してもらってます」
今度はチャイナドレスを着た赤髪の女性が立っていた
確か|紅 美鈴《Hong Meiling》という名前だったか
尤も、被弾したら意味ないんですけど、と苦笑する美鈴
絶対何かあったんだろうが、訊く気はない
「それと、このスペルカードルールだけど、必ず最初に枚数を指定するのと、それぞれのスペルカードに制限時間を設けること、スペルカードを使うときは宣言する事、スペルカードを使い切ったら負けを認めることが条件ね
あと、スペルカードにするまでもない簡単な弾幕なら宣言する必要もないわ
ただし、こちらもある程度時間を決めることと、スペルカードの枚数を遙かに越える回数は使えないわ」
それじゃあ何時まで経っても終わらないし、とレミリア
「で、話は最初に戻るけど、確か貴女は霧を起こせたわよね
それで、ここを中心に霧を撒いて欲しいの
具体的に色は紅、幻想郷を完全に覆うまで5日ほどかかるペースで、妖気の濃度は人間が1時間吸い続けて気分が悪くなる程度に薄いもの
どう、できる?」
「ああ、やってみる」
「それと各自分かってるとは思うけど、異変を起こしたら数日で異変を解決しに誰かやってくるから、その時は必ずスペルカードを使うこと
美鈴、スペルカードを提示してこない相手は追い払っても構わないけど、スペルカードルールで負けたら素直に通して頂戴
咲夜は侵入者を見つけたら、スペルカードで迎撃しつつ、大広間に誘導して
パチェはいつも通り、特に何もしなくて良い」
「・・・図書室に侵入者が来たら?」
「その時はスペルカードで迎撃
あとは咲夜と同じく、大広間に向かわせればいい」
「分かりました」
「了解しました」
「・・・分かったわ」
「それじゃ、明日の朝、異変を起こすわ」




